Ⅳ:01 ─白い世界の中で、眠れ─

松田はるき

prologue

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 竜よ この地で 深く眠れ

 自ら生んだ 白の中で眠れ

 安心しろ お前は孤独ではない

 眠るのは お前だけではない


 ──フロイル地方に伝わる民謡(題名不詳)
























 もう、脚は、何も感じられない。

 雪の上を素足で走れば、当然そうなる。だけど、実際にやってみたら、こんなにも感じる事が出来なくなるなんて、思ってもみなかった。

 指の関節は紅く膨らんでいる。痛みも冷たさもない。動いているのかも分からない。

 もはや歩いているというより、ただ必死に動かしているだけ。これだけ必死に動かしているのに、走りづらい。走れない。足首どころか膝まで雪の中にすっぽりと入ってしまう。

 荒れ狂う吹雪の中で呼吸するたびに、冷たい空気が口の中にまとわりつく。雪も入ってきて、時たまむせそうになる。身体がいうことをきかなくなっていく。でも、歩みは止まらない、止められない。ここで止まったら、死んでしまう。

 自分の身体が冷たくなっていく。こんな薄着で雪の中を駆け抜けたら、当たり前だ。でも、そうするしかない。

 走らなきゃ。逃げなきゃ。

 あそこで意味のない生贄になるなんて、絶対に、嫌!


 あれ? 身体が、動かない。……そうか。今、倒れている。


 身体のほとんどが、雪に埋もれている。

 起き上がらなきゃ! 起き上がらないと……。

 ダメだ、腕を動かせない。生まれてから今まで出したことの無い声なき声をあげている。

 やっぱり、逃げないほうがよかった、の、か、な……。

 もう、ダメ、だ……。


 意識、が、


 まぶ、

 た、

 が……。








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