つばさをください
雨世界
1 先輩。両手に花ですね。
つばさをください
先輩。両手に花ですね。
七月。
柏葉湊が松野菘と初めて出会ったのは、白山千里とデートをしてすごく流行っている映画を見た帰りの夕焼けの時間のことだった。
千里が元気よく「先輩!! さようなら。また明日学校で!」と言って湊の前からいなくなってから、湊は一人、噂のお守りを手に入れるために街の中心にある『白羽神社』の前までやってきたのだけど、その入り口のところにある赤い鳥居のところに一人の湊や千里と同じ東高の制服を着た小柄の女子高生が立っていた。
変だと思ったのは、その女子高生がお面を顔の後ろにつけていることだった。
まあ、もうそろそろお祭りの季節ではあるし、どこかでお祭りでもやっていたのかもしれない、とそんなことをぼんやりと考えながら、湊は赤い鳥居をくぐり、石段を登って、白羽神社の本殿まで移動しようとした。
「待ってください」
そんなときに、湊はそう声をかけられた。
「? はい」
面識がない女子高生に声をかけられて、不審に思いながらも湊は言う。
「あの、あなたは柏葉湊先輩……ですよね?」
自分の名前を言われて「そうです」と湊は答える。するとその女子高生は安心したように、にっこりと笑うと「私、千里の、白山千里の友達です」とその女子高生は湊に言った。
その言葉を聞いて、ああ、なるほど。と湊は思った。
それからその女子高生は少し湊と話がしたいというので、湊は「わかりました」と答え、そのお面をつけた女子高生がにっこりとまた笑って、それから二人は一緒に白羽神社の本殿のところにまで移動をした。
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