概要
彼女が集めていたのは、天国まで持っていけるものだった。
志花は小説を書いている。あるいは、小説みたいなものを。
それは、高校時代からの話だ。僕が文芸部ではじめて出会ったときから、それは今でも続いている。彼女が意味を見いだせるのは、それだけだからだ。
大学を卒業して、いったんは就職して、でも結局、志花はそれを全部やめてしまう。もともと、そんなことは無理だったのだ。クジラが陸にあがらないのや、ペンギンが空を飛ばないのと、同じくらいに。
かといって、彼女が職業的小説家になれるかというと、その可能性はかぎりなく低かった。そこには輝かしい未来があるわけでも、捨てられない過去があるわけでもない。それは、どこにも行きつかない、あるいは、どこにも向かっていない、そんな道でしかなかった。
それでも、彼女の書く文章には時々、はっとするほど〝きれい〟なところ
それは、高校時代からの話だ。僕が文芸部ではじめて出会ったときから、それは今でも続いている。彼女が意味を見いだせるのは、それだけだからだ。
大学を卒業して、いったんは就職して、でも結局、志花はそれを全部やめてしまう。もともと、そんなことは無理だったのだ。クジラが陸にあがらないのや、ペンギンが空を飛ばないのと、同じくらいに。
かといって、彼女が職業的小説家になれるかというと、その可能性はかぎりなく低かった。そこには輝かしい未来があるわけでも、捨てられない過去があるわけでもない。それは、どこにも行きつかない、あるいは、どこにも向かっていない、そんな道でしかなかった。
それでも、彼女の書く文章には時々、はっとするほど〝きれい〟なところ
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