「翅」を含む小説

　十代の子供の背に蝶の翅が生える奇病、クピド症候群。専門的な治療を行う蝶乃宮病院は病気の特異性から虫籠と呼ばれていた。 　そこに入院する患者の一人、大空翔は生まれて始めて家族と離…

連作短歌です。

祈 晴弥（いのり はれや）は生まれつき孤独を感じていた。鏡で見た自分と周りが見る自分との差異、感情の機微、その違いに違和感を覚えている。金糸の髪と碧色の瞳は周りからは黒く見えてい…

「おまえみたいな奴、かならず離縁してやるから」 東京の片隅、みどり深き山のふもとにその神社はあった。 神社の跡取りで、この世とあの世の境を守る「常野守」でもある高校生の少年・晴…

　私は孤独主義者として生きてきた。 　厭世家だった。社会不適合者だった。 　きっと人は一人でも生きていける。だから私は孤独でよかった。 　だのに、彼女は私の中へと入ってくる。 　…

とある2020年代後半の日本。異誕(いたん)呼ばれる人外達が、古より発生する世界。 警察庁ではそれらの犯罪に対処すべく、 特務機関「異誕対策特務分室」が運営されていた。 分室に勤…

【アルファポリス第3回ホラー・ミステリー大賞奨励賞】 　いつもと変わらないはずの金曜日。 　穏やかな夜明けを迎えたかに見えた彼らの街は、いたる所からあがる悲鳴に満たされた。 　…

——湖畔に立つ古い屋敷に、妖精姫と名乗る少女が住んでいる。 翅を用意すると彼女に話を持ちかければ少なくない宝石も手に入る。 そう聞いた詐欺師のルイスは屋敷を訪ね、少女ユーウェル…

【電撃小説大賞参加作品】 　時は未来。はるか昔に人類と分かたれたもう一つの人類、怪物の姿に変化できる種族テリオンの次元が地球に接近する。 　かつて地球上に二つの人類が生まれ、争い…

ハワイに住むコオロギ族は自分達を襲うハエ族に悩まされていた。彼等はハエが自分達の求愛ソングを聞きつけてやって来る事に気付き、ある作戦をうつ事に…… 寄生バエから逃れる為に短期間…

【翅を舞わせた夜は寂れても、太陽に殺されない蒐集品はまだ私を魅了している】 『過去の私』 2023.3.31 近況ノート 蒐集品、美しくも閲覧注意にて https://k…

　御神花（ごしんか）と尊ばれる花の根元に築かれた王国で、“私”は甘露を作る仕事をしていた。母のコピーとして生まれ、個性など何もないはずの存在だが、女王の血を引く自由民たちはそんな…

始まりは親友からの電話だった。同僚が行方不明となり、捜査官の俺、キノシタ・カイトに行方を追ってほしいとのことだった。だが、手応えのないうちに事件は収束し、代わりに始まりを告げる別…

酒田茉莉花(まつりか)･･･虫が好きな眼鏡っ娘。 鶴岡薊(あざみ)･･･クラスでも浮きがちな女子。重森先生が好き。 重森先生…薊と茉莉花のクラスの副担任で理科教師。長身で白衣を着…

アルマ・フォーゲル。 名高き武門の家に生まれた見目麗しき彼女は、一族の例に漏れず、厳しい訓練のもとに剣の才能を開花させてゆく。 しかし、彼女には自身とごく一部の者しか知らない異能…

日本には約８７種いる。その中で、永遠に死ぬ事はない、『Forever Love』と呼ばれる、ミヤマカラスアゲハと言う日本で最も美しいと言われるチョウがいる。 １０年、１００年、１…

※一部過激な性的描写があります。読む際はご留意ください。 自作「太陽と向日葵」の番外編。 昭和35年の東京の下町。男色が集まる店で働く浦井直純ことジュートは、新人のタイチという…

孤独で塵芥のような僕と、秘密を抱えた美しい君。 夏の田園で二人は出会い、それぞれに惑う。 ＊＊＊ 夏休みを過ごす田舎で、見知らぬ芳しい少年に理不尽な文句をつけられ、読書の木陰を追…

秒で読めるとても短い詩です

作家、蒼翅碧花が同居人ともども雲隠れしてから数か月。ある冬の朝、彼は自宅の庭で変わり果てた姿で見つかった。その傍らには一体の白骨死体が土から上半身を出している。一体この家で何があ…