紫黒の乙女 -転生のおと外典-

津多 時ロウ

むかーし むかしの そのむかし

 むかーし むかしの そのむかし

 おとうさんやおかあさんの おじいさんやおばあさんの

 そのまた おじいさんやおばあさんが うまれるよりも

 もっと もっと もっと もっと ずーっとむかし

 ひとはまいにち けものにおびえて

 くらいあなのなかでくらし

 さくもつのたねをまいてもそだたず

 まいにち まいにち こまっていました


 あるひ ひとはいのりました


 「ああ かみよ ひかりをください」


 すると どこからか おひさまがあらわれ ひかりがわきだし

 たちまち あたりはあかるくなりました


 また ひとはいのりました


 「ああ かみよ たねをまいても さくもつがそだたないのです

  どうか おたすけください」


 すると めのまえのだいちが たちまち はたけになり

 どこからか わきだした みずと おひさまによって

 さくもつが いっぱい しゅうかくできるようになりました


 ひとは まだ いのります


 「ああ かみよ こわい けものがいるのです

  どうか わたしに ちからづよい からだをください」


 ひとのからだは みるみるうちに たくましくなり

 こわいけものと たたかいましたが まけて

 おおけがを おってしまいました


 ひとは また いのりました


 「ああ かみさま どうか このきずを なおしてください

  そして こわい けものと いっしょにたたかう

  なかまを おつかわしください」


 すると たちまち おおけががなおり

 どこからか ひとがあつまってきました


 こんどは みんなでたすけあって こわい けものと たたかいました

 こわい こわい けものは みんなでがんばって たおすことがました


 そして ひとは みんなでまちをつくり しんでんをつくって

 いっしょにくらすことにしました


 だけども もんだいがおこりました


 「ああ かみよ わたしたちに やみをください

  あかるすぎて ねむれないのです」


 ひとがいのると 1にちのはんぶんよりも すこしみじかいじかん

 おひさまが かくれんぼして くらくなり

 かわりに おつきさまと おほしまが あらわれて

 ひとを やさしく てらしました


 そうして ひる と よる ができました


 よるは とてもくらいのですが

 ひとは あんしんして ねることができました


 なぜなら みんなといっしょにいるからです


 そうして ひとは かみさまにいのりながら

 みんなで たくさん まちとしんでんをつくって

 すえながく くらしました



 めでたし めでたし

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