「純文学？ 耽美」を含む小説

　いつも視界の隅で、誰かの指が夜想曲を弾くような手つきを繰り返していた。執拗に、冗長に。 　それは、バスの車内で揺られる今では、周りの乗客たちが携帯電話を弄る動作であったり、運転…

《物語群2》箱庭のセモット 大乱は終結し, 皇国内外の秩序は元通りとなった。市民達は以前と同じく, 強化された《種族位階》のヒエラルキーに従いつつも 堕落した快楽に身を包み, 権…

出版社に務める遥は才能に溢れる作家を探していた。そんな時、遥は出版社のネット投稿で一人の作家に目をつける。作家の名前は蒼井　切(あおい　せつ)、遥は切に会う為に車を飛ばす。だが彼…

㊗一矢射的先生 主催企画「大人の恋はアバンチュール」にて『冬のアプロディーテ』が入賞。 耽美的な不貞は、世のひんしゅくを買うのみならず、破滅の美をも呼び寄せる。

写生。首吊りがあった樹を見つめる少女。

顔を洗い続ける父の背中。行旅死亡人の情報が映し出される液晶画面。円陣の中に正座する少女。

細やかに私の引越しを手伝ってくれる男。 アウトレットモールで咲く花に生まれ変わりたいと夢見た男。 二人へ投げ出した「どこでもいい」という言葉。

古写真の匂い。マジックミラーの向こうの女。不能のからだ。老母の白い髪。

それは、病というには美しすぎた。 幼くして日本舞踊の華と称えられた娘・雛牡丹は病に倒れ、日舞の道を閉ざされる。 それは、才能があるものだけが罹患する《才咲き》という奇病であった…

女性向けの読みきり短編集になります。 夢のなかを歩くような心持ちで読んでいただければ幸いです。 登場人物 薬師(やくし) 涼衣(すずのえ) 白妙(しろたえ) 雅(みやび) …

美しい少女の屍の、時間と共に、うつりゆく変化。それは何を問うものか。死とは何か、聖とは何か。現実と幻想の狭間で真実を見た。

　初冬のある日、私は先輩の部屋を訪ねた。 　表向きは柿を貰いに。でも本当は大声では言えない先輩の季節の風物詩と、先輩の心を手に入れるために。 2021/09/05　違法コピーサ…

蒸し暑い夏の午後、しなやかな素足に藍の鱗。 柔い生地のワンピース。締まった膝頭に絡みつく美しき蛇。 僕の頭に焼きついて離れない、遠い日の情景が夏ごとに甦る。 藤香。君の蛇は健や…

長野県K町の山奥にひっそりと佇むミッションスクール、『聖純女学院』。 ここではこんな噂が囁かれていた。 ”教会のマリア様にお願い事をすると、何でも一つ願いが叶う。 ……と同時に、…

　お待ちください。どうぞ、お待ちください。 　妾の姿が見えてらっしゃるんでしょう？　妾の声が聞こえていらっしゃるんでしょう？　どうか行かないで。どうか話を聞いてくださいまし。 　…

やさしい笑みをもつ女を、男は発作のように殺した。死体は、浮浪者たちの町に捨てた。 しかしそれは、数時間と経たぬうちに、ほんの少し目を離したその間に、忽然と消え失せる。 彼女はどこ…

ワンライなどで書いたSS置き場。 文体を寄せているだけで個々の話には関連性なし。

　今日は少女の１４回目の誕生日。アリサは、とある事情で生まれてこの方、ガラス張りの小さな部屋からただの一度も出たことがなかった。自分なりの人生を模索する少女は、独りぼっち……の、…

黒髪の双子、アイザックとディエゴ。 ずっとふたり、同じものとして生きていた彼らがお互いを「ちがうもの」として、ふたりからひとりへ、自我の確立を図るとき。「ひみつ」がふたりを狂わせ…

僕たちはどうして懐かしさに惹かれるのだろう。 心地の良いノスタルジー。郷愁感。 子供の頃に聞いた音楽や作品を、妙に愛おしく思ってしまうのは、どうしてだろう。 波の音は、僕たちの…