【カクヨムWeb小説短編賞2023】円城塔先生にインタビュー!「円城塔賞」受賞のポイントとは?



「カクヨムWeb小説短編賞2023」に新しく設けられた「円城塔賞」
円城塔先生が選考委員を務めるとあって、応募要項発表時には大きな話題となりました。

【短編小説部門】円城塔賞(1名)
正賞:記念品 副賞:Amazonギフトカード1万円分
作品タグ「円城塔賞」をつけて公開した作品の中から円城塔先生が特に優秀な作品を選出します。
受賞作品は、「小説 野性時代」(2024年8月号)に掲載される予定です(原稿料のお支払いはございません)。なお、当該作品掲載号(電子版)は、賞品として進呈いたします。

そこで今回は、円城先生にインタビューを実施。
カクヨムで活動をはじめられたきっかけや選考のポイントをお聞きしました。

円城塔先生インタビュー

ーー既に人気作家でいらっしゃる円城先生ですが、カクヨムでも作品を投稿されています。そのご縁から今回、選考委員をご依頼させていただくこととなったのですが、どのようなきっかけからカクヨムで投稿をはじめられたのでしょうか。
※円城先生のカクヨムアカウントはこちらから


カクヨムに投稿というか、本体はGitHubにあります。
今後、ネット上で小説を公開するという場合、個人サイトと、集約型のサイトに同時並行的に上げていくということになるのではないかと思います。
ひとまずはその実験を兼ねてというところです。

ネット上に小説を上げてみることにしたのは、遠からず高い確率で起こりそうな、紙メディア生態系のダウンに対応するためです。電子上の小説は紙のものとは異なるものになっていくはずで、どの程度の作業量でどんな規模のマネタイズがありうるのか、ネット上の小説の生態系はどこへ進んでいくべきなのかを探る手がかりを求めてということでもあります。

もう少し実地の話としては、誰もが電子的に扱いやすい小説のデータが欲しい、という動機もあります。これは機械学習用のデータセットなどを視野に入れた話です。

ライトノベルの興隆や携帯小説の誕生、SNS上の交流を通じて、ネット上の「小説」はあらたな文体を生み出してきたと考えています。
それと同時に、権利の問題であるとか、紙メディアでは発生しにくかった急速な拡散からの炎上と呼ばれる現象など、考えるべき問題は多くあります。これは実際に参加している人々が行く先を左右するものであり、左右するべきものであると思います。小説の文体から、小説を書く環境までの話として。

まだまだとりかかりの段階ではないかと思います。

ーー出版業界の今後を見据えて、ということなのですね。
さて、今回「円城塔賞」の選考の対象となるのは、本文文字数400〜1万字の作品です。円城先生がカクヨム上で投稿されている『通信記録保管所』という作品も短編作品集ですが、短編の限られた文字数の中で作品をつくりあげる際、どのようなことを意識されていますでしょうか?


短篇の長さでは全てを説明しきることはできないわけですが、それゆえに自由度の高いところがあり、読者にゆだねるところが大きいという感覚があります。
質と量で圧倒するというよりは、読者との掛け合いのようなことができる余地が多くあるということでもあります。連歌が短歌における上の句と下の句を別々に分担して読み続けていったりすることに近いかもしれません。
ですので、意識しているのは、短いながらの「ひろがり」「つながり」でしょうか。

ーー短編だからこそできることというものがありそうです。
円城先生の作品はどれも今までに読んだことのない新しい題材をテーマにされていると感じており、その目の付け所に毎度驚かされます。円城先生が作品を執筆される際、大切にされていることはどのようなことでしょうか?


短篇に限らず小説の利点の一つとして、ある種の「手軽さ」が挙げられると思います。それでも人生を左右する程度の時間と手間が必要となるわけですが、漫画やアニメーション、映画製作と比べると費用や人間関係の調整など含めて、こぢんまりとしたものです。
その視点からすると小説の使命のひとつは、モックの作製や、可能なお話なるものを高速でパラメータサーチしていくことと考えることもできます。
当然、小説にしかできない表現、重厚な芸術作品、人の心を揺さぶる深遠な文学を突き詰めていくことは重要です。しかし現在の環境下においてはまず、広く小説なるものを可能としている空間の様子を探ることも必要なのでは、と感じています。結果的に、小説にならないということも起こるわけですが。

ーー最後に、応募者に向けてメッセージをお願いいたします。

「文芸」ということですので、なんでもよろしいのです。
ただやはり、欲しいのは新奇性ではないでしょうか。どこかで見たものや、誰かに似ていると感じさせるものはどうしてもオリジナルを超えられないものですし、それこそ人工知能が得意とする領域になっていくでしょう。
受賞作はWeb小説サイト上でも文芸誌上でも読まれることになるので、Web小説サイトの形式に特化しすぎても文芸誌の作風に特化しすぎても、賞の対象としては難しいところです。
とはいえ、ことはやはり「文芸」ですので、正統派と無手勝流の入り乱れる他流試合のようなところもあり、非常に古典的で端正な作品が残るということもやはりありえます。

実のところ、カクヨムに(というかネット上に)今よりも様々なジャンルの小説が並ぶようになってくれるのが一段前の目標です。
ともかくもどこかに置いておかなければ、誰かの目にとまることもないのです。

円城先生、ありがとうございました!

「円城塔賞」受賞作は「小説 野性時代」に掲載予定!

円城先生からも触れられていました通り、「円城塔賞」受賞作は「小説 野性時代」に掲載される予定です。
文芸誌に掲載されることも意識しつつ、作品の構想を練るとよいかもしれません。
ぜひ本誌を読んで研究してみてください。

「小説 野性時代」とは?

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊誌「小説 野性時代」。
綴られた言葉の奥には、ここでしか体験できない無限の世界が広がっています。
ミステリ、サスペンス、歴史、青春、恋愛、冒険、エッセイ……。
ジャンルを問わず、とにかく刺激的な作品を、毎月お届けします。
電子版:毎月25日配信


小説 野性時代 第240号 2023年11月号” class=

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