4/21開催 「カクヨムユーザーミーティング Vol.4」 イベントレポート

4/21(金)に、カクヨムのオープン1周年を記念したイベント「カクヨムユーザーミーティング 拡大版」を開催しました。
特別回ということで、今回はレギュラーイベントとは会場を変え、通常ご参加いただいている人数の2倍以上の方々にお集まりいただきました。




第一部 トークイベント「本づくりの現場を語る!」
ファンタジア文庫・ドラゴンマガジン編集部/カドカワBOOKSの森井統括編集長と、ファンタジア文庫・ドラゴンマガジン編集部の有馬氏が登壇。
テーマを「本づくりの現場を語る!」と設定し、ライトノベルの作り方や作品の届け方を編集という立場からお話いただきました。



(※以下、当日のトークから要約)
ファンタジア文庫とは約30年の歴史をもつレーベルで、主に10代の男性を対象にしたエンタテインメントノベルを手がけています。
読者層は10代男性を中心にしつつ、学生時代にファンタジアの作品を初めて手に取った時から、大人になっても変わらずに買い続けてくださるファンの方々もいらっしゃるので、20代後半の読者層も厚いのが特徴です。ですが、彼らが求めているものはあくまでファンタジア文庫が掲げる「10代男性向け」の作品だと考えています。そのため、いたずらに大人の客層にあわせて内容を変えたりすることはせずに、レーベルのメイン読者層である10代の男性をターゲットにした作品を作り続けています。
(※旧富士見書房の場合、ファンタジアが10代向けとして存在する一方、20~30代向けの作品は「単行本」として別ラインで出していました。このラインは後に「カドカワBOOKS」としてレーベルになります。)

まずは「本はどうやってつくられるのか」ということで、企画の立ち上げから書籍となって店頭に並ぶまでのお話をいたします。
主に、作品が世に出るまでには3つのパターンがあります。

1.新人賞の受賞作品を書籍化する
2.すでにデビューしている作家などと編集が共同で企画を立ち上げる
3.Web上に投稿されている作品を書籍化する

Web小説に限らず、書籍化を決める上で大事なことに「その作品の面白さを一言で説明できる」という点が挙げられます。「面白さ」とは小説という商品にとっての最も大事なセールスポイントであり、それがわかりやすく伝わる作品というのは、読者の興味を惹きやすく、手にとってもらえる可能性が高いのです。

さて、上2つに比べ、3つめの「Web作品の書籍化」はここ数年で出てきた新しい流れです。
Web小説の書籍化は他の方法にはない特徴があり、例えば出版前から作品のファンが一定数いることがまず挙げられます。
また、プロが企画を立てるとどうしても市場のトレンドなどを見越して作品を作るため、世界観やキャラ、物語で同じ要素を持った作品が同じ時期に重なってしまうことがあります。一方、Webの世界から出てきた作品には、トレンドに縛られない自由なアイデアが多くあり、そういった光る個性を持った作品に出会えることもWeb小説の魅力でしょう。

『蜘蛛ですが、なにか?』著:馬場翁

ケースバイケースではありますが、実は作品を作るために必要なアイデアは、一つあれば充分です。一つの「飛び抜けて面白い/斬新なアイデア」を軸にして作品を考えてみてください。あとはその要素を研ぎ澄まし、練り上げていくことで「わかりやすい面白さを持った」作品へと仕上がるのではないでしょうか。

ちなみに、ファンタジア文庫の場合は、Web上で公開されている作品であっても、一冊の本として商業流通することになった時には、その形態で楽しむために最もふさわしい作品へと改稿していくパターンが多くあります。
そのため、Webで執筆される際は書籍化のことを前提とせず、まずは「横書きであり、PCもしくはスマホで読む」Web小説として読んで楽しめる文体や改行などで執筆することをおすすめします。(※もちろん、書籍化の手法はレーベルや作品によってまちまちです。)

また、「Web小説」から「本」となった時に現れる最大の違いである「表紙」についても、作品の魅力を最大限伝えるための工夫が随所に凝らされています。
例えば、登場するキャラクターの選定、背景の有無、作品タイトルの文字の入れ方...あくまでも一例ではありますが、背景なしの白地にキャラクターを置き、白抜きの文字にぼかした色フチをつけたタイトルを大きく入れるパターンは、文庫という小さな本のサイズで本屋に置かれた際に人の目に止まりやすく、「ライトノベルの表紙デザイン」という観点からは一つの最適解とも言えます。

『フルメタル・パニック! アナザー』原:賀東招二 著:大黒尚人
『甘城ブリリアントパーク』著:賀東招二


さらに、発売後の展開であるメディアミックスについて最新の動向を交えてお話します。
まず、近年ではWeb小説を原作としたコミカライズ作品が非常に好調です。理由としては、「一話ごとに連載していく」という作品の執筆形態が漫画雑誌の連載漫画に近く、一話ごとに話の起伏や次の展開への引きがあるコミックと非常に相性の良い展開となっているためではないか、といった分析がなされています。
また、アニメ化であれば「純粋に売上の高い作品からアニメ化される」というわけでは決してなく、重要なのは「映像化した際に作品の魅力を最大限引き出せる」かどうか、という点が重視されます。そういった観点に基づいて、どの作品を映像化するかを決めるのは、あくまで映像の責任者であるアニメプロデューサーの仕事となります。

ライトノベルは非常にメディアミックスと相性の良い媒体ではありますが、いずれにせよ、まずは「書籍という形態」でその作品の魅力を100%伝えることを目指してください。

最後に、これから作品を書かれる方々に対してちょっとしたアドバイスをお伝えします。
新しく作品を執筆する際は、「その作品を誰に読ませたいのか」という対象を絞って考えてみてください。好みや趣向も様々な「全員」を読者にしてしまうと、作品の面白さの肝心であり、一番読ませたい「核」の部分が薄れてしまうことがあります。
それよりは、まずは「この人たちに読んでもらいたい」という具体的な読者層をイメージし、その人達に向けて書いたほうが、個性を消すことなく面白さのポイントが際立つ、ユニークな作品に仕上がるのではないでしょうか。

また、「カクヨム」というプラットフォームはまだ黎明期であり、作品のトレンドや読者のニーズなども固まっていません。そのため、動向を分析して「今流行っているもの」を書くだけでなく、ぜひ「次の流行を自分が作り出す」ことを目指して、新しいジャンルを開拓していってください。

どんな時でも、新しい時代は「その時に全くない、『新しい作品』を生み出した」作家が切り拓いていくものです。


第二部 ユーザー交流会
後半は趣旨を変え、ユーザーの皆様と運営とで自由に交流を楽しめる、立食形式のパーティを開催しました。
交流中にはカクヨムのサービス状況報告ということで、カクヨムの一年間の振り返りと今後の予定について発表しました。また、ユーザーの皆様と直接意見交換のできる貴重な機会のため、運営と開発についての質疑応答コーナーも設けました。



「カクヨム サービス開始から一年間の振り返りと今後の予定について」
カクヨムプロジェクトの一年間:
2015年12月: 作品投稿受付開始
2016年2月29日: サービス開始
2016年12月末: 会員登録数10万人突破
2017年4月現在:会員登録数12万人超、DAU数&アクセス数ともに好調で、過去最高を更新する勢いが3・4月と続いています

※当日発表したサービス資料の一部(いずれも作者・読者含めたカクヨム利用者全体の数値)



特筆すべきは、カクヨム投稿作品のジャンル別シェアです。Web小説のトレンドとして知られる「異世界ファンタジー」の作品はカクヨム全体の20%ほどであり、その他にも現代ドラマ、ラブコメ、現代ファンタジー、SFなどがバランス良く投稿されているため、カクヨムの作品はジャンルの偏りに囚われることなく、サービスとしての多様性が維持できているものと自負しております。

今後もコンテストやイベントなどを続々企画中です。春~夏にかけても準備中の企画が何件がありますので、詳細はまた追ってお知らせいたします。
また、アプリの改善にも力を入れていく予定です。

鳥は特に何も考えていませんが、今後もなんとなくいると思います。


「カクヨムに関する質疑応答」
(2017年4月21日回答 回答者:KADOKAWA カクヨム担当部長・編集長/はてな 開発担当ディレクター・プランナー)

Q1. 性描写の表現はどこまで可能か?
A1. カクヨムは全年齢向けサイトを目指しております。そのため、一つのラインとしては「子供に読ませられないものはNG」とお考えください。具体的な例を申しますと、性的興奮を煽ることを目的とした文章・描写はお控えください。

Q2. 自主企画ページにもランキングを導入して欲しい。
A2. 開発項目は検討中であり、またサービス状況によって開発優先度が変わることもあるため確約ということではお話できないのですが、将来的には導入を検討しています。今回リリースした自主企画は、皆様に使っていただく上で必要最低限の機能でまずリリースしました。こちらで皆様にお使いいただいてから、そのご意見などをヒアリングして、例えば更新順・人気順に作品をソートする機能であったり、また主催者がコンテストの受賞作品を選出する機能などを追加していくかどうかといった検討事項にフィードバックしていきます。

Q3. ロボットジャンルを追加する予定はあるか?
A3. ジャンルは我々が決めるものではなく、あくまでユーザーが決めるものと考えています。そのため、ジャンル編成については今後の利用状況を見て、必要と判断した場合に検討させていただきます。なお、ロボットジャンルの方々の熱い気持ちは運営に届いておりますので、皆様に喜んでいただくための企画を準備中です。

Q4. サイトトップのデザインリニューアルが自分にとって不便に感じられた。
A4. カクヨムの利用ユーザーには大きく分けて「作者」と「読者」という2つの属性があります。それぞれのサービス利用目的が違うという性質上、何かの改修や新機能を追加した際は、相反する部分が出てきてしまうことも時にあります。この点は運営側にとっても非常に悩ましい部分ではあるのですが、なるべく両者の要望をバランス良く取り入れて、どちらかが極端な不利益を被らないように今後も開発を行っていきたいと考えております。

Q5. カクヨムは登録ユーザーを増やすためにどのような施策を行っているのか?
A5. 様々な施策を行っていますが、一例では小規模の開発・改善を繰り返し、新規ユーザーが会員登録のメリットを実感できたり、ストレスなく会員登録を行えたり、またアプリDLに興味を持っていただけるような形で、日々サービスに細かな手を加えています。

(※以上の回答は2017年4月21日時点のものです)

カクヨムユーザーミーティングは今後も不定期に開催予定です。
また開催が決まりましたら、イベントの詳細についてはメールマガジンなどでご案内させていただきます。

今後ともカクヨムをよろしくお願いします。