【カクヨムコン11特別企画】これであなたも書き「始め」られる! 人気作家に聞いた、第1話完成に至るまでの道のり【蓮水涼先生】

小説を書くとき、何から始めればいい?

12月1日(月)よりいよいよ、「カクヨムコンテスト11」の応募受付が開始されます。
これまで何度かチャレンジしている方、初めてチャレンジする方、中には長編小説の執筆自体が初めてだという方もいるでしょう。

そんな時、真っ先にぶつかるのが「何から始めればいいかわからない」という悩みです。
プロット作りから着手すべきなのか、キャラクターから仕上げるべきなのか、見せ場から考えるべきなのか……。

トリアイコン
もちろん人それぞれ、自分にあったやり方があるはずですが、それを見つけるためにもまずはヒントがほしいところ……!

そこで、カクヨムでの執筆経験もお持ちの人気作家のみなさんに「第1話を作り終えるまでに、どのような工程を踏んでいるか」についてインタビューさせていただきました。

今回お話を伺うのは、角川ビーンズ文庫より「異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います」シリーズを刊行している蓮水涼先生。
10月31日(金)には『異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います9』も発売されます!
インタビューを読んで気になった人は、ぜひチェックしてみてください。

異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います9

異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います9

著者:蓮水 涼 イラスト:まち

ウィリアムが完全復活!? そしてついに、瘴気の源の謎が明かされる――。

ウィリアムの記憶を取り戻すため、浄化薬の改良をすることになったフェリシア。
開発チームと改良に臨むも、なかなか上手くいかない。
焦るフェリシアだが、彼女を気遣うウィリアムとの距離は次第に縮まっていく。
そして、成功の契機となったのは思い出の“あの花”で――!?
すべてが繋がり『異世界の扉』と『瘴気』の謎がついに解明される! 
「何度でも、何度だって、君を愛するよ」
WEB発・異世界ラブコメ大団円!

インタビュー本編

「妄想」から始まる小説づくり

――自己紹介をお願いします。

蓮水涼先生(以下「蓮水」):角川ビーンズ文庫様で「異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います」シリーズなどを書いております、蓮水涼と申します。異世界恋愛ファンタジーの執筆をメインに活動しています。

――さっそくですが、蓮水先生は作品を書き始める際、まずは何から着手されますか。

蓮水:ひと言で言えば妄想から始めます。いきなり気合を入れてパソコンやノート等に向かうことはなく、まずは「どんなの書こうかな~」くらいのゆるい妄想から入ります。そしてそのとき、私はストーリーよりもキャラたちの関係性を魅せたくて物語を書くタイプの作家ですので、まずはキャラ設定から考えることが多いです。今回はどういうヒロインとヒーローの組み合わせで書こうか、みたいな感じですね。

――そこからどのように膨らませ、他の要素を検討していくのでしょうか。実際に書き始める直前までの具体的な工程を伺えると幸いです。

蓮水:ヒロインとヒーローの組み合わせを決めたあとは(たとえば芯の通った健気なヒロインと執着心の強い拗らせヒーローにしよう、など)、世界観やヒロインとヒーローの設定を練ることが多いです。魔法はあるのかないのか? ヒロインは転生者か現地人か? 何か特別な力はあるのかないのか? そうしてある程度の世界観や人物設定を決めていく過程で、自動的に「この主人公たちならこんなストーリーを書こう」だったり「こういうシーンを入れたい」だったり、細切れのストーリーが浮かんでくることが多いです。

 またこのときに併行して「主人公(私の場合は女性主人公が多いのでヒロイン)は物語の中で何を為し得たいのか(目標)」を考えます。世界一の魔法使いを目指すのか、ヒーローとの結婚なのか、とにかく物語を完結に持っていくための絶対にブレない(ブレさせない)一本の軸を決めるのです。これに向かって主人公は動くことになるので、これが曖昧だと読者様にも「この主人公はいったい何がしたいのか?」と思われ、置いてきぼりをくらわせてしまう可能性があるからです。

▲『異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います』1巻の表紙。

――たとえば『異世界から聖女が来るようなので、邪魔者は消えようと思います』も、そのような工程でできあがっていったのでしょうか。

蓮水:そうですね。「毒好きのヒロインと執着心強めヒーローを書きたい」というのがまず当該作品を書くきっかけ(”始め”)になりました。そこから「ヒロインは転生者にしたい」「舞台は乙女ゲームの世界で」「ヒーローとのすれ違いも書きたいから、ヒロインはヒーローに想い人がいると勘違いしてもらおう」「元の乙女ゲームでは、ヒロインはヒーローに殺される設定でもいいな。これも『すれ違い』になるもんね」「ややこしくなるし魔法はない世界にしよう」というような感じで決めたあと、「じゃあヒロインがもろもろ勘違いして逃げるシーンは書きたいな」「で、ヒロインに逃げられたヒーローがブチ切れて暴走するシーンも入れたい」「あとヒーローに眼鏡かけさせたい(普段はかけていない)」といういくつかのシーン(書きたいこと)が浮かび、同時に「自分を殺す予定のヒーローから逃げる」という目標を設定しました(なお、本シリーズは9巻まで発売されていますが、web連載当時は1巻分完結を想定して書いていましたので、その時のことを回答しています)。では目標を達成するためや浮かんだシーンに到達するためには、どういう経緯が必要か? どういう問題が起きればそこに辿り着けるのか? と、逆算してストーリーを展開していき、最終的に一つの長編にしました。ここまでの過程が、いわゆるプロットになります。プロットが書き上がれば、あとは実際に本編を書くだけです。

 余談ですが、ここまでの話でおわかりのとおり、私はweb小説であっても最初に1作品を書き上げてから投稿するタイプです。他のタイプには「書いた分をそのまま投稿するタイプ」や「数話分の書き溜めをしながら投稿するタイプ」などがあると思います。このタイプによっても「物語の組み立て方」がだいぶ違うと思いますので、参考までに、私は「先に物語を完結させてから投稿するタイプです」とお伝えしておきます。

▲ヒーローが眼鏡をかけているワンシーン。

謎を提示し、目標を提示する1話目

――実際に書き始めるとき、作品冒頭(第1話)ではどのようなことを意識されていますか。

蓮水:これは商業本でもweb小説でも変わりません。必ず1話目で読者様の興味を引くような展開を入れることは意識しています。わかりやすいのは「謎の提示」です。この先どうなるんだろう? と思っていただければ先が気になり読み続けてもらえます。そのため、1話目が単なる世界観の説明だけで終わる、ということはしないように意識しています。

 また、なるべく主人公の「目標」も開示しています。早めに開示しておいたほうが「これはこういう主人公がこういう目標を達成するための小説なんだね」と読者様にわかっていただけるので、「そういうお話好きです」「そういうのが読みたかった」という読者様を次話へ誘えるからです。ただweb小説は1話ごとの文字数はあまり多くないほうが好まれる傾向にあるようですので、無理なときは「早め」に開示できればいいくらいの温度感です。

小説執筆はスタンプラリー

――作品冒頭(第1話)の執筆後は、どのように続きを書いていきますか。プロット通りに進めていく、アドリブやライブ感を大事に1話1話を盛り上げていくなど、意識されていることがあればご教示ください。

蓮水:これは特に作家によって違うと思いますが、私の場合は――ここまで偉そうに答えておきながら――プロットどおりにいったためしがありません(歴代の担当様本当に申し訳ありません……)。理由は、かっこよく言えば「キャラが勝手に動き出すから」。情けなく言えば「プロット時にキャラの詳細を詰めていないから」。私の場合は最初から何もかもガチガチに決めてしまうと物語全体がこじんまりとしてしまうタイプなので、あえて余白を残したプロットを書きます。余白部分は、本編執筆時にキャラの選択に委ねてしまうため、プロットどおりにいかないのです。それでも、絶対にブレさせない「目標」や、そこに至るまでのポイント地点的シーンだけは変えないよう気をつけています。イメージはスタンプラリーでしょうか。あれはスタンプを集めるために必ず「スタンプのある地点」には行きますよね。けれど、その道のりは参加者(作者や登場人物)に委ねられています。つまり「道のりは違えどスタンプを集めてくれるならいっか!」という考えで執筆しています。雑に思われるかもしれませんが、目標やポイント地点から外れなければ、プロットと道のりは違っても案外ちゃんと着地点には到達するので、「プロットどおりにいかなくて物語の収拾がつかない」「プロットはそこまで詳細を決めない」ような方には試す価値があるかもしれません(※なお、これはプロットから逸脱することを推奨するものではなく、あくまでどうしてもプロットどおりいかなくて困っている場合の、物語を完結に導くための一つの手段としてお考えください)。
 念のため、これも同じシリーズ(異世界から聖女の1巻)で例をあげますと、ポイント地点は「ヒロインがヒーローから逃げるため協力者を訪ねる」「ヒーローが嫉妬する」「ヒロインの兄登場」「ヒーローがヒロインに求婚する」です。ポイント地点の数は特に決めていないので、多いときもあれば、少ないときもあります。

 他に意識していることと言えば、私の場合は先に述べたように「ストーリー展開で魅せる」よりも「キャラの関係性で魅せる」ほうに重きを置いているため、会話のテンポ感は大事にしています。会話のテンポがいいと、読者様も読みやすいと思ってくれることが多いようです。また、これはよく耳にするのではないかと思いますが、1話目だけでなく、なるべく各話の最後には次話を読んでもらえそうな『引き』を入れるようには意識していますね。最近、縦読み漫画がこれのいい勉強になるのではないかと個人的には思っています。

 以上が、私が執筆するときの主な流れですが、小説を書きたいけれどどうすればいいのかわからないと迷っている方に、あくまで一例として、参考になれましたら幸いです。

――「カクヨムコン11」に挑む作者の方々にも、大きなヒントになったと思います。ありがとうございました。


ぜひこのインタビューを参考に、自分なりの書き「始め」方を見つけていただければ幸いです。
「カクヨムコンテスト11」は、12月1日(月)より応募開始です。ふるってご参加ください!

kakuyomu.jp