第4話 初めての神社修繕

次の日の朝、紗希は作業場に向かう途中で、ピロンに話しかけられた。


「紗希、今日は源蔵さんと一緒に神社の修繕に行くんだって!緊張してる?」


「ちょっと……でも……頑張る……」


彼女の手には、昨日渡された青い宝石が握られていた。キラキラと輝くその宝石を見つめると、少しだけ自信が湧いてくる気がした。


作業場に到着すると、源蔵が荷車に木材や工具を積み込みながら紗希を待っていた。


「今日はちょっと離れた村の神社へ行くぞ。柱が古くなって、修繕が必要らしいんだ。」


「わ、私も……手伝える、かな……?」


「もちろんだ。お前さんはもう立派な見習いだ。」


源蔵の言葉に、紗希は嬉しさと緊張を感じながら荷車を押す手伝いをした。


村の神社に到着すると、地元の人々が集まって彼らを出迎えた。神社は小さな木造の建物で、柱が朽ちかけていて全体が傾いている。


「これは思った以上に手がかかりそうだな……。よし、まずは危ない部分を取り除くぞ。」


源蔵が指示を出し、紗希は慎重に柱の周りの装飾を外す作業を任された。昨日学んだ道具の扱いを思い出しながら、震える手で少しずつ作業を進める。


「紗希、力を抜いて。焦らずにやればいい。」


「うん……!」


源蔵の声に励まされ、紗希は落ち着きを取り戻した。作業を進めるうちに、少しずつ手が慣れてくるのがわかった。


昼食の時間になると、村人たちが温かいスープと焼き立てのパンを差し入れてくれた。紗希はそれを食べながら、村人たちが修繕を心待ちにしている様子をじっと見つめた。


「この神社はね、私たちの生活の中心なんだよ。」


一人の女性が優しく話しかけてきた。


「ここで毎朝お祈りをして、家族や村の平和を願ってるの。だから、こうして修繕に来てくれたあなたたちに、とても感謝してるの。」


「そ、そんな……私……まだ何も……」


「そんなことないよ。あなたがここに来てくれるだけで、私たちは安心できるんだ。」


その言葉に紗希は胸がじんわりと温かくなるのを感じた。


午後になると、朽ちた柱を新しい木材に取り替える作業が始まった。源蔵が大きな柱を慎重に運び、紗希もその補助をした。初めての大掛かりな作業に戸惑いながらも、源蔵の指示通りに動くことで、少しずつ作業が進んでいく。


「紗希、いいぞ。その調子だ。」


「はい……!」


新しい柱がぴたりと収まった瞬間、村人たちから歓声が上がった。紗希も思わず顔をほころばせる。


「これで神社はまた長い間、村を見守ってくれるな。」


源蔵の言葉に、紗希は小さく頷いた。自分がこの世界で誰かの役に立てたという実感が、彼女の心に小さな光を灯した。


作業がすべて終わり、夕方になると村人たちが小さな緑色の宝石を紗希に手渡した。


「これは今日の報酬だよ。ありがとう、紗希さん。」


「……ありがとう、ございます……!」


紗希はその宝石を大切にポケットにしまい、胸が少しだけ温かくなった気がした。異世界での暮らしがまだ始まったばかりだが、彼女の中には確かな何かが芽生え始めていた。


「明日もまた頑張れる……そう思える……」


家路につく道すがら、紗希はそうつぶやきながら小さな微笑みを浮かべた。

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