第17話 神社の秘密
雨の日の修繕を終え、紗希はますます宮大工としての自覚を深めていた。そんなある日、源蔵が彼女を呼び止めた。
「紗希、今日は特別な仕事だ。神社の奥にある『秘密の部屋』を修繕する。」
「秘密の部屋……?」
紗希は聞き慣れない言葉に驚きながら、源蔵の話に耳を傾けた。
「神社には普通の人が入らない場所がある。祈りの場として、特別に大切にされてきた場所だ。だが長い間手入れがされておらず、修繕が必要になった。」
源蔵の表情は真剣そのもので、紗希は緊張しながら頷いた。
「わ、わかりました……」
神社の奥にあるその部屋は、分厚い扉の奥に隠されていた。神主が扉を開くと、中には古びた木材と色あせた装飾が見えた。静寂に包まれたその空間は、どこか神聖な雰囲気を漂わせていた。
「この部屋は、神社の歴史と人々の祈りが込められた場所です。どうか慎重に修繕をお願いします。」
神主の言葉に、紗希は深く頭を下げた。
作業を始めると、部屋の天井に取り付けられた彫刻が崩れかけていることがわかった。木材が劣化しており、装飾の一部が欠けていた。
「この彫刻を直すのが、お前の仕事だ。」と源蔵が言った。
「私が……この装飾を……?」
「そうだ。この部屋を蘇らせるために、お前の技術が必要だ。」
紗希は深呼吸をし、作業台に彫刻を下ろして観察した。細かい模様が繊細に刻まれており、その一部が欠けている。新しい木材で補修する必要があった。
「この模様……どうやって直せば……」
「模様の流れをよく見て感じ取れ。すべては繋がっているんだ。」
源蔵のアドバイスを受け、紗希は慎重にノミを動かした。欠けた部分を補う新しい木材を削り、模様が自然に続くように形を整えていく。
「紗希、いい感じだよ!」ピロンが応援する。
「ありがとう……でも……もっと丁寧に……」
数時間後、新しい木材が彫刻の一部として見事に馴染んだ。紗希はそれを元の位置に取り付けると、部屋全体に調和が戻ったように感じた。
「素晴らしい出来だ。この部屋がまた、神聖な場として生き返ったな。」源蔵が微笑んだ。
作業を終えたあと、神主が紗希に深い感謝の言葉を述べた。
「紗希さん、あなたの手でこの部屋が蘇りました。この神社にとって、そして私たち村人にとっても、大きな意味を持つことです。」
その言葉に、紗希の胸がじんわりと温かくなった。
その夜、源蔵は紗希に深い紫色の宝石を手渡した。
「この宝石は、祈りと調和を象徴するものだ。この部屋の修繕を通じて、お前は神聖な場と人々の思いを繋げた。」
紗希は宝石を手に取り、静かに微笑んだ。
「私……この場所……守れてよかった……」
「それでいい。お前の手で神社が生き続ける。それが宮大工の誇りだ。」
こうして紗希は、神社の奥に隠された秘密を修繕し、また一つ成長の階段を登ったのだった。
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