第24話 星を映す池

夏祭りの賑わいが終わり、神社には静けさが戻っていた。そんなある日、神主が紗希と源蔵に新しい依頼を持ちかけた。


「境内の池が荒れ、星を映すと言われていた水面が濁ってしまっています。この池を整え、再び神社の象徴として蘇らせていただけませんか?」


「星を……映す池……?」紗希はその美しい言葉に心を惹かれた。


「この池は、かつて満天の星を水面に映し、訪れる人々の心を癒していたそうだ。お前の手で、再びその輝きを取り戻してやってくれ。」源蔵が静かに言った。


「わ、わかりました……やってみます……」


池に向かうと、かつて美しかったというその場所は、土砂や落ち葉に埋もれ、水が濁り切っていた。紗希はその様子に心を痛めながらも、修復する決意を新たにした。


「まずは水を抜き、池底を綺麗にすることからだ。」源蔵が指示を出す。


紗希は村人たちの協力を得て、池の水を抜く作業を始めた。泥水がゆっくりと流れ出す中で、池底に溜まった落ち葉や石を一つずつ取り除いていく。


「この作業……地味だけど……大事だね……」紗希が呟くと、ピロンが元気よく応えた。


「そうだよ!まずは基礎を整えることが大切なんだ!」


池底が綺麗になった後、紗希は新しい石を使って池の縁を補修する作業に取り掛かった。古くなった石を取り除き、新しい石を並べることで、池全体が引き締まった印象になった。


「石の形をよく見て、ぴったり合う場所を探せ。」源蔵の助言を受けながら、紗希は慎重に石を配置していった。


「この石……ここかな……?」


「いい感じだよ、紗希!その調子!」ピロンが明るく声をかける。


少しずつ形が整い、池の輪郭が美しく際立つようになった。


最後の工程は水を張る作業だった。山から引いた清らかな水が池に流れ込むと、濁りのない透き通った水面が広がった。紗希はその水面を見つめ、息を呑んだ。


「これで……星も映るかな……?」


「さあ、夜になればわかる。」源蔵が穏やかに答えた。


その夜、満天の星空の下で紗希と源蔵、そして村人たちが池の前に集まった。静寂の中、池の水面には無数の星が揺らめくように映り込んでいた。


「わあ……綺麗……」


村人たちはその光景に息を呑み、感嘆の声を上げた。


「ありがとう、紗希さん!この池がまた星を映すなんて、夢のようです!」


「これでまた、ここで祈りを捧げられますね。」


村人たちの喜びに包まれながら、紗希は自分の手でこの光景を蘇らせたことに胸が温かくなるのを感じた。


その夜、源蔵は紗希に透明な青い宝石を手渡した。


「この宝石は『浄化』を象徴するものだ。お前がこの池を清めたことで、村人たちの心もまた癒された。」


紗希はその宝石を大切に握りしめ、静かに微笑んだ。


「私……この池みたいに……人の心を……映せる宮大工になりたい……」


「それがお前の目指す道なら、きっとなれるさ。」


紗希の胸にはまた一つ、新たな決意が生まれていた。こうして彼女は、星を映す池を蘇らせ、宮大工としてさらに成長を遂げていくのだった。

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