第36話 祭りの旗竿
春の足音が聞こえるある日、神主が紗希と源蔵のもとを訪れ、新たな依頼を持ちかけた。
「春祭りで使う旗竿が壊れてしまいました。この旗竿は村の誇りを象徴するものであり、祭りには欠かせません。修繕をお願いできますか?」
「旗竿……村の誇り……」
紗希はその言葉の重みを感じ、強く頷いた。
「旗竿はただ旗を掲げるためのものではない。村人たちが自分たちの歴史や団結を感じる象徴だ。その意味を込めて蘇らせるんだ。」源蔵が真剣に語る。
「わ、私……やります……!」
壊れた旗竿は、神社の倉庫に保管されていた。それは長い木製の竿で、一部がひび割れ、表面の塗装も剥げていた。旗を固定する金具も錆びつき、使えない状態だった。
「まずはひび割れた部分を修復し、竿全体を滑らかに整える。その後、金具を新しく取り付けて旗をしっかり固定できるようにする。」源蔵が作業の流れを説明する。
紗希は慎重に作業を始めた。
最初に取り掛かったのは、ひび割れた部分の修復だった。紗希は木材のひびを丁寧に削り、新しい木材を埋め込んで滑らかに整えた。
「この旗竿……たくさんの風を受けてきたんだね……」
「その通りだ。風とともに、村人たちの思いを空に届けてきたんだ。」
紗希はその言葉を胸に、さらに慎重に作業を進めた。
次に、竿全体を磨き直し、新しい塗装を施す工程に入った。紗希は木の質感を活かしながら、強度を保つために特別な塗料を重ねた。
「これで……また風を受け止められる……」
「見た目だけでなく、耐久性も重要だ。どんな風にも耐えられるように仕上げろ。」
紗希は塗装が乾く間、旗を固定するための金具を新たに作る作業に取り掛かった。錆びた金具を取り外し、錆に強い金属で新しい金具を作り直した。
すべての修繕が終わり、旗竿は見違えるような美しさと強さを取り戻した。春祭りの準備が進む中、村人たちが集まり、旗竿を設置する様子を見守った。
「これが新しい旗竿か!なんて立派なんだ!」
「これなら村の旗も誇らしく空に揚がるね!」
村人たちの期待の声に、紗希は胸の奥が温かくなるのを感じた。
春祭りの日、修繕された旗竿に大きな旗が掲げられた。それは鮮やかに風に揺れ、青空に映えて村の誇りそのものを示しているようだった。
「こんなに綺麗な旗を見るのは初めてだ……!」
「紗希さん、本当にありがとう!これで祭りが盛り上がるよ!」
村人たちの喜びの声に囲まれながら、紗希は自分の手で村の象徴を支えられたことに深い満足感を覚えた。
その夜、源蔵は紗希に鮮やかな青色の宝石を手渡した。
「この宝石は『誇り』を象徴するものだ。お前が修繕した旗竿は、村の心を空に届ける力を持つ。」
紗希は宝石を手に取り、静かに微笑んだ。
「私……もっと……村の象徴を……作りたい……」
「その志を持ち続けろ。それが宮大工としての誇りだ。」
紗希はその言葉を胸に刻み、また新たな目標を抱いて歩み始めた。こうして彼女は、村の誇りを掲げる旗竿を蘇らせ、宮大工としてさらなる成長を遂げていくのだった。
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