第37話 風鈴の庭

春の訪れを喜ぶ村人たちが神社を訪れる中、神主が紗希と源蔵に新たな依頼を持ちかけた。


「今年の春祭りでは、境内に風鈴を飾りたいと考えています。ただ、吊るすための庭の設置が必要です。村の皆が楽しめるような場所を作っていただけますか?」


「風鈴の庭……?」


紗希はその新しい発想に心を動かされながら、少し緊張した表情で頷いた。


「風鈴の庭は、風を通じて人々の心を和ませる場所だ。美しさと穏やかさを兼ね備えたものを作る。それがお前の役目だ。」源蔵が説明する。


「私……やります……!」


作業の最初の工程は、庭全体のデザインを考えることだった。紗希は神社の境内を歩き回り、風鈴が心地よく響く場所を探した。


「この木の下……風が通りそう……」


「いい場所だな。その木陰が風鈴の音を引き立てるだろう。」源蔵が頷く。


紗希はスケッチを描きながら、風鈴を吊るすための柱や飾りをどのように配置するかを考えた。


次に、庭の中心となる柱を作る作業が始まった。紗希は風鈴を支える柱を木材から削り出し、風の流れを感じられるように曲線的なデザインを取り入れた。


「この柱……風の流れに合わせて……」


「その感覚を大切にしろ。柱は庭全体を引き立てる役割を持つ。」


柱には木の葉をモチーフにした彫刻を施し、風鈴が吊るされたときに自然と調和するよう工夫した。


柱が完成すると、次に風鈴を吊るすためのフレームを作る工程に入った。紗希は木材を丁寧に組み合わせ、風鈴が適切な高さで揺れるように調整した。


「この高さなら……音が響きやすいかな……?」


「いい感じだ。音を想像しながら仕上げていけ。」


紗希はフレーム全体に装飾を施し、風鈴が揺れるたびに光を反射する小さな彫刻を追加した。


庭全体の設置が終わると、村人たちが風鈴を一つひとつ吊るし始めた。色とりどりの風鈴が柱やフレームに揺れ、春風が吹くたびに涼やかな音色を奏でた。


「なんて素敵な庭なんだ……!」


「ここで風鈴の音を聞くだけで心が癒される……!」


村人たちはその美しい光景と音色に感動し、庭は春祭りの中心として大勢の人々を集めた。


その夜、源蔵は紗希に透明な淡い青緑色の宝石を手渡した。


「この宝石は『調和』を象徴するものだ。お前が作った庭は、自然と人々の心を繋げる力を持つ。」


紗希は宝石をじっと見つめ、静かに微笑んだ。


「私……もっと……自然と人々が繋がる場所を……作りたい……」


「その思いを忘れるな。それが宮大工としての使命だ。」


紗希はまた一つ、宮大工としての目標を胸に刻み、新たな挑戦へ向けて歩み始めた。こうして彼女は、風鈴の庭を作り、宮大工としてさらなる成長を遂げていくのだった。

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コスプレ少女、異世界で凄腕宮大工になる 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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