第21話 神楽殿の復活

ある日の朝、神主から特別な依頼が届いた。


「神楽殿が長い間使われておらず、老朽化が進んでいます。この村の伝統である神楽舞を再びここで披露できるよう、修繕をお願いしたいのです。」


「神楽殿……?」紗希はその言葉に耳を傾けた。


「神楽殿は、村人たちが神様に感謝を伝える舞を披露する場所だ。修繕を終えれば、また村の活気を取り戻せる。」源蔵が説明する。


紗希は緊張しながらも、大切な仕事だと感じ、深く頷いた。


「わ、わかりました……やってみます……!」


神楽殿は神社の敷地内にあり、舞台として使われる木造の建物だった。屋根には苔が生え、舞台の床板は所々で腐っていた。


「まずは舞台の床板をすべて取り替える。そして、屋根の補修だ。」


源蔵の指示に従い、紗希は床板を一枚ずつ取り外す作業から始めた。湿気で劣化した木材は脆く、力を入れすぎると崩れてしまうこともあった。


「気をつけて、紗希。無理に剥がすと他の部分を傷めるぞ。」源蔵が声をかける。


「はい……慎重に……」


床板を取り外した後、新しい木材を舞台に並べる作業が始まった。紗希は木材を寸分の狂いなく切り出し、ピタリと収まるように慎重に調整した。


「木目が綺麗に揃ってる!紗希、すごいよ!」ピロンが嬉しそうに声を上げる。


「ありがとう……ピロン……」


床板が全て張り替えられると、舞台が見違えるように美しく蘇った。


次に取り掛かったのは屋根の補修だ。紗希は瓦を取り外し、雨漏りを防ぐために新しい瓦を一枚ずつ丁寧に配置していった。


「雨や風から神楽殿を守るのも重要な仕事だ。」源蔵の言葉に紗希は頷き、慎重に作業を進めた。


屋根の高さや作業の難しさに何度も心が折れそうになったが、ピロンと源蔵の励ましに支えられ、最後までやり遂げた。


夕方、修繕を終えた神楽殿は、夕陽に照らされて輝いていた。その光景に、村人たちは歓声を上げた。


「こんなに綺麗な神楽殿を見たのは初めてだ!ありがとう、紗希さん!」


「これでまた、みんなで神楽舞を楽しめるね!」


村人たちの喜びの声を聞きながら、紗希は自分の仕事が人々の生活に直結していることを改めて感じた。


その夜、源蔵は鮮やかな赤い宝石を紗希に手渡した。


「この宝石は『活気』を象徴するものだ。お前が修繕した神楽殿は、村に新たな命を吹き込んだ。」


紗希はその宝石を手に取り、静かに微笑んだ。


「私……この神楽殿で……村が笑顔になるのが……嬉しい……」


「それがお前の仕事の意味だ。お前の手が村に明かりを灯したんだよ。」


紗希はその言葉を胸に刻み、また新たな挑戦に向けて歩み出した。こうして彼女は、神楽殿の復活を通じて、さらに宮大工としての道を進んでいくのだった。

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