第34話 雪を照らす篝火台

冬の真っ只中、神主が紗希と源蔵に新たな依頼を持ってきた。


「村の入り口にある篝火台(かがりびだい)が壊れ、使えなくなっています。これは雪深い冬の夜に村を照らし、人々の安全を守る大切なものです。修繕をお願いできますか?」


「篝火台……村を照らす……」


紗希は寒さの中でも、その依頼の重みを感じ、深く頷いた。


「篝火台はただの灯りではない。道しるべであり、村人たちの心を暖かく照らす存在だ。それを蘇らせるのが、お前の役目だ。」源蔵が静かに語った。


「わ、私……やります……!」


篝火台は村の入口にあり、大きな鉄製の籠と、それを支える木製の台座で構成されていた。しかし、木製の台座は腐食し、鉄製の籠も錆びて歪んでいた。


「まずは台座を新しく作り直し、鉄製の籠を修復する。その後、全体を組み立てて強度を高める。」源蔵が説明する。


紗希は慎重に作業を始めた。


最初に取り掛かったのは、台座の製作だった。雪や雨にも耐えられるように、特別に加工した木材を使い、頑丈な形に組み立てる必要があった。


「この台座が……篝火を支える……」


「そうだ。台座がしっかりしていなければ、どんなに大きな火も役に立たない。」


紗希はノミやカンナを使いながら、木材を正確に削り、接合部分を滑らかに整えた。木目を揃えることで、見た目にも美しく、強度のある台座が形作られていった。


次に、鉄製の籠の修復に取り掛かった。錆びた部分を磨き直し、歪んだ形をハンマーで慎重に整えた。


「この鉄……頑丈だけど……扱いが難しい……」


「力加減が大事だ。壊すのではなく、形を整えることを意識しろ。」


源蔵の助言に従い、紗希は一打ち一打ちを丁寧に行い、籠の形を元通りにしていった。最後に耐久性を高めるため、鉄に特殊な塗料を塗り込んだ。


すべての部品が揃った後、篝火台の組み立てが始まった。紗希は台座と籠をしっかりと固定し、風や雪に耐えられる強度を確保するため、金具を追加で取り付けた。


「これで……また篝火が灯せる……」


「十分だ。この篝火台は、村の人々を再び暖かく照らすだろう。」


源蔵の言葉に、紗希は少しだけ自信を持てた。


修繕された篝火台が村の入り口に設置されたその夜、神主が篝火に火を入れた。大きな炎が籠の中で揺れ、周囲の雪景色を美しく照らし出した。


「なんて綺麗な光だ……!」


「これで夜道を安心して歩けるね!」


村人たちは篝火の光に喜び、感謝の言葉を紗希に伝えた。


その夜、源蔵は紗希に鮮やかな赤色の宝石を手渡した。


「この宝石は『灯り』を象徴するものだ。お前が修繕した篝火台は、村人たちの心に再び暖かさを届けた。」


紗希はその宝石を大切に握りしめ、静かに微笑んだ。


「私……もっと……人々の夜を……明るくしたい……」


「その心があれば、お前はさらに強くなれる。灯りを生む職人は、人々に希望を与える存在だ。」


紗希はその言葉を胸に刻み、また一つ新たな目標を抱いた。こうして彼女は、雪を照らす篝火台を蘇らせ、宮大工としてさらなる成長を遂げていくのだった。

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