さよなら、悪魔

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（126文字）

　子供に恵まれなかった夫婦が養子縁組で迎えた１４歳の美少女。でもその少女には抗いがたい魔性の香りがあって……。

　毎話登場する心美ちゃんの言動に不穏な予感が襲って「いーーーやーーーー！！」と叫びそうになりますが（頭の中では常に叫んでいます笑）、どんな展開が待っているのか気になって読み進めてしまいます。たぶん心美ちゃんの魅惑の匂いに喰われてしまっているのでしょう……。

　ハッピーな結末になるのかダークサイドに堕ちるのか、凄く気になりながらハラハラ読んでいます。揺れ動く主人公パパの心情に私も綱渡りをしているような気分になります。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（303文字）

様々な側面から、主人公と我々の心を縛り付けてくる養子の心美。

何が演技で何が自然体なのか、どれが本音でどれが嘘なのか、はたまた全てが……。

読み始めたら最後、彼女のことが頭から離れなくなる素敵な物語です。

超常現象があるタイプではなく、いわゆるサイコホラーにあたるかとおもいます。
人間の心の闇――この場合は必ずしも『闇』なのかはまだ終わってないので分からないですが。
ただ、最初に提示されたあれは何なのか――それが少しずつ解き明かされて行く様が、何とも言えない、恐怖を感じさせます。
死の恐怖ではなく、狂気が忍び寄ってくるような恐怖でしょうか。
最後の光景がどうなるのか。
これからも楽しみに拝読させていただこうかと思います。

この作品はホラーのカテゴリーです。
しかし、超常現象や怪異などは一切でてきません。

ステップファミリーとして、少女を受け入れた夫婦。その父親の目線で語られる一人称の現代ドラマ。

主役の父親は、何も危険が訪れません。

それなのにホラーなのです。

なんでこんな話が書けるのか不思議でなりません。

少女は父親から見れば理想の娘の行動を取っているのです。
が、父親の疑惑ばかりが膨れ上がり、確実にホラー作品になっている。

良質なサイコホラー。

とにかく文章が美しい。美しいから怖い。

京野　薫という作家は必ずプロになる。

圧倒的な文章力を持つ作家の、秀作です。

ホラー、サスペンス、偏愛、考察、エロス
どれか一つでも刺ささるなら楽しめる上に、上記の要素も味わえます

主人公の卓也に対して異常な執着をみせる心美
彼女の行動の異様さ、年齢不相応の挙動に目を持っていかれますが
そもそも彼女は何故、卓也に執着するのか
卓也夫妻は心美を選んだが、逆に選ばれていたのではとまで考えてしまいます
取り調べ染みた身辺調査があったのであれば、彼女ならそれを……なんて想像してしまいますね
卓也の過去は心美と重なる部分がありますが、それは心美にしても同じわけで

そうした切っ掛けの部分のみならず、冒頭の演出含めて読者の視点誘導、描写、台詞の扱い、共に抜群に上手い
純粋に話を…続きを読む

主人公夫妻が、ある中学生の少女と養子縁組するところから始まる本作。
しかしこの少女、見た目は年相応で可愛いのに、どこか底の知れない妖艶さを隠していて……！？
彼女を迎えたことから、主人公の日常は少しずつ壊れていく……。

本作の作者様の作品は他にも何作か拝読しておりますが、この作者様、こうした”どこか陰のある少女”を描くのがすさまじく上手いです。

加えて、各キャラクターの内面、特に本人は隠しているであろう心の内のほの暗い影の部分もそれとなく、でも丁寧に描かれていて……。

怪異も出てこないし超常現象も起こらないにも関わらず、読めば読むほど背筋が凍ります。

ストーリーそのものも、常に先が気…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（259文字）

　第一話を読むだけで、もう完全に物語の魅力に引きずりこまれます。

　主人公である卓也と香苗の夫婦は、養子縁組によって児童養護施設から『心美』という少女を娘として迎え入れることを決める。
　そして心美を連れて家へと帰るのだが、施設の関係者はひどく不安そうな顔でその姿を見送るのだった。

　もうこの冒頭の場面により、「この先にどんな怖いことが？」と、続きが気になって仕方なくなります。十四歳の美少女、心美。彼女はどんな存在で、何が人を不安にさせるのか。そもそも、彼女は一体何者なのか。

　心美を家に招き入れてから、卓也の周辺では不穏なことが起こり始める。
　しかし、まだ全貌は見えません。心美は『…続きを読む