(18)死亡確認

 ひたいを撃ち抜かれたおじさんの死体は白目をむいて、倒れていた。血色けっしょくは完全に失われ、皮膚は白味を帯びていた。

 うつ伏せに倒れたおじいさんの死体も同様に、全身を真っ赤に染めた血が黒ずんでおり時間の経過を思わせた。


「到着しましたわねぇ……」

 レージョは二人の死体を前にしたが、何ら関心を示さなかった。

「さぁ、どうしましょうか? 死するべき相手を先にあの世に送ってあげるか……あるいは、愛する者に愛を伝えるか……」

 レージョはあごに手を当ててう〜んとうなった。


「もうやめて!」

 二人の死体を見下ろしながらナジーは声を震わせた。

 目に涙を浮かべ、嗚咽おえつれるのを抑えながら叫んだ。

 レージョとは違い、ナジーは二人が死んだことを悲しんでいた。


「こんなことをして何になるのよ!」

「私はただ、彼を愛しているだけですわ」

「愛……ですって?」

 ワナワナとナジーは肩を震わせる。

「貴方はただシソクを苦しめているだけよ! 愛だなんて……適当なことを言わないで!」

「それは……」

 熱が入って叫ぶナジーとは対照的に、レージョは静かな声で呟いたものだ。

「貴方も愛を知れば、きっと分かることでしょう。私は、こうしなければなりませんの……」

 沈黙が起こり、場は静まり返った。


 重苦しい空気となった。


「……決めましたわ!」

 何事かを思い付いたらしく、レージョは何時いつもの調子を取り戻して笑みを浮かべながらパチンッと手を叩く。

「先ずは、邪魔者を八つ裂きにするとしましょう。それから、二人っきりで愛を育くめば良いのですわ!」

 レージョはそれしかないと言ったように瞳を輝かせてうなずいた。

 そして、前に進み出るとレージョは出刃包丁をナジーへと向けた。


「ご機嫌よう、お邪魔者さん……」

 別れの挨拶を口にしたレージョは、口角を上げた。

 出刃包丁を思い切り振り上げて、ナジーへと襲い掛かったのであった。

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