(11)忍び寄る音と気配の恐怖
──パキッ!
──ガサッ!
暗い森のあちこちから物音がした。
そのたびにシソクは怯えて体を強張らせ、警戒したものである。
身構えて音のした方向を観察するが──生物の気配はなかった。
ホッと胸を撫で下ろしたところで──パキッ!
また別のところから音がしたので、シソクの神経は休まらなかった。
周囲の安全を確認したシソクは、ナジーのところに戻ることにした。
倒れた大木と地面の段差により、ちょっとした空洞が出来ていた。そこにナジーは居た。膝を抱いて座り、体をブルブルと震わせていた。
「大丈夫?」
ナジーを心配したシソクが声を掛けると、彼女は顔を上げた。
「え、ええ……」
「落ち着いて。僕が守るから。絶対に、無事に村にまで連れて帰るからさ」
元気付けるようにシソクは言った。
本当は、シソク自身も怯えて怖かったが、ナジーが不安にならないよう勇気を出した。
──ところがナジーは「うーうん、違うの」と首を左右に振るった。──が、すぐに自分の反応を間違えたことに気が付いたようだ。思い直して、笑みを浮かべた。
「うん! ありがとう。信じているわ」
そんなナジーの期待に応えるように、シソクは頷くと立ち上がった。
空洞から出て、再び周囲に目を向ける。
夜の森の中を闇雲に走って来たせいで、方向感覚は失われていた。村がどちらにあるのか、シソクには皆目見当も付かない。
こんなにも森の奥深くにまではシソクも足を踏み入れたことがなかったので、尚のこと自分たちが居る位置すら分からなかった。
ナジーの手前、強がってみせたので今更泣き言を言うわけにもいかない。
どうにかするしかない──のである。
足がかりになるものはないかと、シソクは辺りを見回した。
──ガサガサッ!
草むらを掻き分けるような音がした。
風の悪戯であろう──。
そう思いつつも、警戒しないわけにはいかない。
シソクは音がした茂みに目を向けた。
──今回もまた、何も姿を現すことはなかった。
そんな恐怖と緊張によって体力はジワジワと蝕まれていた。極度の緊張感が続き、発狂すらしてしまいそうになる。
自身の体を抱いて、シソクは震えたものだ。
ふと──シソクは上着のポケットに、硬いものが入っていることに気が付いた。
「これは……!」
そして、シソクはこの状況を打開するための道具を所持していたことに気が付いたのであった。
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