(15)抑えられない興奮

 腰を抜かし、ナジーは地面に尻餅をついた。

 その足の間にレージョの振り下ろした棍棒が突き刺さり、鈍い音が響いた。周囲に砂粒が飛び散る。

 ナジーは驚き、目を見開いていた。その瞳に──口を歪めるレージョの表情が写る。


「あら……残念ですわ」


 ヌッと、レージョはナジーに顔を近付けた。


「脳天をカチ割って、脳髄のうずいをばらいて差し上げようと思いましたのに……」

 口調は穏やかであったがレージョの言葉には殺意がにじみ出ていた。シソクとナジーは、戦慄せんりつしたものである。

 レージョはゆっくりと立ち上がった。そして、レージョは振り向きざまに思いっ切り棍棒を振るった。


──カァアンッ!


 側にあった木の幹にそれは当たり、甲高い音が夜の森に響き渡った。


「愛する者は天国に……恋路こいじの邪魔をする不届き者は、地獄へ送ってやりますわ!」


 レージョは棍棒を地面に投げ捨てた。

──かと思えば、スカートをたくし上げて中から出刃包丁を取り出した。

 刃をナジーへと向け、レージョは笑った。

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