第15話
その夜は、眠れなかった。貰ったペンダントを触りながら、ハルを思った。私は、大丈夫だろうか?ハルには、好意を持っているのは、確かだった。でも、愛するようになるだろうか? 分からなかったけれど、ゆっくり好きになっていこうと思っていた。
目が覚めると、9時だった。夢も見ずよく寝ていた。スマホを見るとハルからLINEで、おはようのメッセージが来ていた。
"おはよう!今、目が覚めた"
と送ったら、
"遅っ!"
と返信が来た。
"6時半までには、行くから"
と、またハルから来た。
"楽しみにしてるよ!何か用意しておく物ある?"
と送った。
"鍋とフライパンがあればいいよ!"
と返信が来た。私は、了解のスタンプを送った。
朝食を済ませ、掃除を始めた。ハルが、料理してくれると言っていたので、台所から始めた。と言っても、あまり使っていないので、すぐに終わった。部屋に掃除機をかけ、トイレ掃除を終えると1時だった。めんどくさかったので、ミルクティだけ飲んだ。
洗濯物を片付けて、時計を見ると4時だった。だいたいこんなもんかな?とベッドに寝転んだ。
部屋のチャイムが鳴った。時計を見ると6時15分だった。寝てしまっていた。ドアモニターを見ると、ハルが、立っていた。早っと思った。
ドアを開けると、
「お待たせ~」
と言って、スーパーの袋をひとつ持って、ハルが、部屋に入ってきた。
私は、頭を触りながら、
「早かったね、寝ちゃってた」
と、笑いながら言った。
「ごめんごめん、親父に言ったら、早く行けって、5時半に上がらせてくれて」
台所に、材料を出しながら、ハルは言った。
「ちゃちゃっと、やっちゃうから、ゆりは、座ってて」
と、調理を始めた。
私は、どうしていいか分からず、テーブルの側に座っていた。
「ハル凄いね!料理やるんだ」
と私が聞くと、
「うち、店やってるから、自然とやるようになってた。ほら、子どもの時って、すぐ腹減るでしょ?」
何かを切りながら言っていた。
「へぇ~、私なんか、すぐ指切っちゃう方」 「ハハ、ゆりっぽい」
「大根すってて、気づいたら指もすってたり」
「大丈夫?それ。ゆりに料理させられないな」
私は、ちょっと怒った。
「ごめん。今度、一緒に作ろ」
と言ってくれた。
暫くすると、いい匂いがしてきた。
「はい、ボンゴレ」
と言って、ハルが、お皿を持ってきた。
「美味しそう!」
「美味しいよ!食べよう!」
二人で、いただきますと言って、食べ始めた。
「美味しい~、本格的だね」
「まあね。ゆりが、パスタ食べるとこ、超絶可愛いから」
私は、笑った。
「マスターが、ハルが言ってたって、言ってた」
「マジか…」
「ともみちゃんも知ってた、ゆりさんですか?って、聞かれたもん」
「俺、そんなに言ってたかな?」
「わかんない」
と私は、笑った。
「ゆりが笑うと俺も嬉しい」
「そう?」
「うん」
と言って、ハルは、私の頭を撫でた。
「私って、頭撫でられやすいのかな?」
「なんで?あ、そっか…」
ハルは、一人で納得していた。
「ごちそうさまでした」
二人で言って、二人でお皿を片付けた。 「coldrainのLIVE観る?」
私が聞いた。
「う~ん、米津玄師聴きたい」
「わかった!」
私は、ノートパソコンを出して、米津玄師クンのCDをかけた。二人で、ベッドを背にして、座っていた。
「ゆり、こっちおいで」
とハルが、言った。私を後ろから抱き締めるようにして座っていた。
「ゆりって、細いよね。ちゃんと食べてる?」
ハルが、くれたペンダントを触りながら言った。
「食べてるよ」
「そっか。ゆりって、お酒飲めるの?」
「あんまり、飲まないかな」
「白ワイン買ってきたんだけど、飲む?」
「少し飲もうか、あ、でもワイングラスとか無いけどいい?」
「うん」
ワインは、入れないであろうグラスを2個持ってきてワインを注ぎ、二人で乾杯した。
「部屋、あんまり物が無いね」
「とりあえずって感じで、引っ越してきたからね」
「うちは古いから物が、いっぱい溢れてる」 「ハルは、何代目?」
「三代目」
「JSoulBrothersみたい」
私は、笑った。
「言われる~、それよく」
「やっぱり」
「カラオケで、歌えって言われる」
「今度行こう!カラオケ」
「良いね。ゆりって、何歌うの?」
「えー、内緒」
私達は、白ワインを少しずつ飲みながら話していた。
「ちょっと酔ったかも」
私が言った。
「頬っぺた赤い」
というと、ハルは、私の右頬を撫でた。
「ハルは、全然赤くないね」
「俺、強いもん」
「なんかずるい、もう飲まないわ」
と私は、立ち上がって、冷蔵庫から、炭酸水を出して飲んだ。
「ゆりの冷蔵庫、炭酸水ばっかりだね」
「うん、好きなの」
「俺もちょうだい」
とハルは、私の手から、炭酸水を取った。 「まだ、冷蔵庫にあるのに」
私は、言った。
「全く味無いんだ」
「うん」
私は、首を傾げて、ハルの側に座った。
「この曲いいね」
「うん、好き。 "Blue Jasmine"って 曲名」
「ラブラブな曲だね」
「うん、微笑ましいよね。でも、私、ジャスミンティー飲めないの」
「俺、飲んだ事も無いな」
ハルは、笑った。音楽が、止まった。
「最後の曲だったんだ」
「うん、他も聴く?」
と、CDを変えようとして立ち上がったら、左手を引っ張られた。
「もう、今日は、いいよ」
「うん…」
「座って」
二人とも、体育座りで向かい合って座っていた。
「何個ピアス開けてるの?」
ハルは、私の左耳を触りながら聞いた。 「え?何個か、わかんない、だいぶ塞がってると思うよ。2個位ずつかな?残ってるの」
「今度の記念日には、ピアスにしよう」
と、ハルは、一人言のように言った。
「今夜、一緒に居てもいい?」
ハルが、私の目を見て聞いた。
「いいよ。明日出勤遅いし」
「何時?」
「11時から8時まで」
「土曜日だから?」
「日によって、違う。ハルは?」
「うちの店は、10時から6時」
と、ハルは右手で、私の左頬を触った。
私は、左手でハルの手を触った。
「ゆり、手、冷たいね。頬はこんなに熱いのに」
「彼女酔わせて、どうするつもり?」
と私は、笑った。
「ゆりって、可愛いな。もっと早く出逢いたかったな…」
と言ってキスをした。
「ハルのキス好き。なんか、やさしい」
ハルは、何も言わなかった。
「ハル?」
「俺、絶対ゆりの事、大切にするから」
と言って、またキスをした。 そして、お姫様だっこをして、ベッドに横たわらせた。
「着替える」
私は、言った。
「ハルは?」
「泊まる準備してきてない」
私は、そりゃそうだなと思いながら笑った。
「なんか無いかな?」
私は、起き上がって、タンスの中の大きめのTシャツを探していた。
「ゆりが平気だったら、パンツで寝る」
「う~ん、コレ着れるかな?」
シドビシャスの写真がプリントされた、凄く大きいTシャツを見付けた。
「はい、着てみて!」
ハルが、上半身、裸になって、着てみたら、着れた。
「あ、着れたね。ハル、細マッチョ」
「なんか、恥ずかしいな」
と、ハルが、笑った。
「どこにも行くわけじゃないから、いいでしょ?」
と私は、言った。そして、新しい歯ブラシを渡した。
「これで、寝れるね!」
と、私がハルに言うと、
「バッチリ」
と言った。
私は、メイクを落としに洗面所に行った。少し顔が火照っていた。
スキンケアを終わらせると、ハルは、歯を磨いていた。
「もう、磨いてる!」
「だって、早く寝たい!」
と、モゴモゴしながら言った。
時計を見ると11時だった。
私も、歯を磨いて、薬を飲んだ。
「いっぱい飲んでるんだね、薬」
「これでもだいぶ、減ったんだよ」
「そうなんだ」
ハルが真面目な顔で言った。
「俺と居て平気?」
急に聞かれた。
「うん、楽しいよ!」
「良かった」
「今夜のハルはシドだし!」
「シドがシドのTシャツ着るか?」
と、笑ったので、
「確かにそうだね」
と、私も、笑った。
二人で私のシングルベッドに潜り込んだ。ハルは、足が出そうだった。他には、誰も居ないのに、隠れるように抱き締めあいながらキスをした。
「やっぱり、息苦しくない?」
ハルが言った。
「顔、出したら?」
「ゆりの顔が、見れなくなる」
「いつでも見れるじゃない…」
と言うと言葉を遮るように、ハルがキスをした。顔中至るところ、耳や首筋まで。私は、されるがままだった。だんだん、意識が遠退いていった。そして、眠ってしまった。ハルは、いつまで起きているんだろうと、思いながら。
目が覚めると午前2時20分だった。ハルは、私を抱き締めたまま、寝ていた。薄暗い部屋のベッドの中で、ハルの顔をじっくり、観察していた。
「ハル、好きよ」
私は、呟いた。ハルは、目覚める事なく、眠っていた。
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