第20話

次の日、佐藤さんと一緒に、エルフに行くことになった。

 ハルが職場まで迎えに来てくれた。

 私たちは仕事が終わって、ハルと合流すると、

「近藤です」

 ハルが、佐藤さんに挨拶した。佐藤さんも、

「佐藤梢です」

 と挨拶した。

 エルフまでの道のり、佐藤さんもやっぱり映画が好きで、今の職場で働いていることを教えてくれた。23歳のフリーターだった。

 エルフの黒板まで着くと、その看板を見て佐藤さんが、

「表通りじゃないんですね」

 と言った。

「私も通勤途中だけど、全然気づかなかったです」

 と私が言った。

 ハルが、エルフのドアを開けると、マスターが、

「いらっしゃい」

 と迎えてくれた。

「マスター、ゆりの職場の人連れてきた」

 ハルが言うと、マスターが佐藤さんに、

「こんばんわ、井川です」

 と言い、私と初めて会った時のように、名刺を渡した。佐藤さんも、

「佐藤梢です」

 と挨拶した。

 マスターと佐藤さんも、LINEの交換をしていた。

 そのまま3人で、カウンターに座り、3人ともカフェオレを頼んだ。

「マスター、佐藤さん彼氏募集中だそうです」

 私が言うと、

「梢ちゃん、何歳?」

 マスターが聞いた。

「23です」

「若いなぁ。仕事は楽しい?」

「楽しいです」

「出身は旭川?」

「はい、生まれてからずっと、旭川です」

「そっか、俺もそう」

 佐藤さんとマスターの会話を聞いていた私たちは、

「マスターのオムライス美味しいですよ」

 と私が言った。すると佐藤さんが、

「食べたいです」

 と言ったので、マスターに3人分作ってもらった。

 オムライスを食べている間も、マスターと佐藤さんの会話が、盛り上がっていた。

「なんか、いい感じじゃない?」

 私が、ハルに小声で言うと、

「俺も思った」

 とハルが言った。

 オムライスを食べ終えると、マスターと佐藤さんの会話に、『LEON』が出てきたらしく、壁の大きい画面には、『LEON』が映し出されていた。

「ゆりちゃんも、好きだって言ってたよね」

 マスターが言うと、私は頷き、

「はい、98点」

 と言った。佐藤さんが、

「わかります!私も98点くらいかな?」

 と言った。

「俺もここで観たことある」

 とハルが言った。

「ハルも観たんだ。ハルも好き?」

 私が聞くと、

「結構哀しい話だよね。俺は、ハッピーエンドな話の方が好きだな」

 と、ハルは言った。

「そうなんだ」

 私が言った。

「そういえば、ゆりと映画に行く約束してたよね」

「そうだね。今度の休みに、行こうか」

 私が言うと、

「一緒に行く?4人で」

 マスターが、私たちの話を聞いていて、言い出した。

「いいかも」

 ハルも賛成した。

「佐藤さん、今度の月曜日、シフト入ってますか?」

 私が、佐藤さんに聞くと、バッグからスケジュール帳を出して、予定を見てくれた。

「ちょうど、休みですね」

 佐藤さんが言ったので、

「じゃあ、皆で行きましょう!」

 と私が言った。

「何観る?」

 マスターが言うと、私が手を上げ、

「ジョンウィックが観たいです」

 と言った。

「ああ、キアヌ・リーヴスのやつね」

 とマスターが言った。

「私、結構アクションもの好きです」

 佐藤さんも言ってくれた。

「俺、わかんない」

 とハルが、苦笑いしていたので、私が、

「きっと、面白いよ」

 と言った。

「決まりかな?」

 とマスターが言って、決定した。

 すぐに、私が、上映スケジュールをスマホで見て、次の月曜の朝9時過ぎからの回を4人で、観に行く事になった。

「楽しみ」

 私が言うと、

「俺も」

 とハルが言った。

 『LEON』を観終わると、私と佐藤さんは涙目だった。

「そろそろ帰ろうか」

 ハルが言うと、マスターが、

「もう、店閉めるから、佐藤さん送っていこうか?」

 と言った。

「いいんですか?」

 佐藤さんが言うと、

「うん、気にしないで。ハルは、ゆりちゃんち行くの?一緒に送るけど」

 と、マスターが言った。

「うん、ゆりんち行く」

 とハルが言った。

 ハルが、マスターを手伝って、帰る準備をした。私と佐藤さんは、黒板をしまう手伝いをした。 

 マスターが、私たちを家まで車で送り、降ろすと、ハルが、

「じゃあ、今度の月曜日に」

 と、助手席に乗る佐藤さんに言うと、

「はい、ありがとうございます」

 と言って、手を振った。

 マスターは、佐藤さんを乗せて、送っていった。

 約束の月曜日、ショッピングモールの映画館の入口で待ち合わせして、ジョンウィックを4人で観に行った。

 観終わって、昼食も一緒に食べることになった。ハルと初めて食事した、パスタのお店に行った。

 席に案内されると、みんなで座り、注文を済ませると、

「凄い、面白かったんだけどぉ」

 ハルが、興奮気味に言った。

「でしょ、パート2あるよね、多分」

 私が言うと、

「あるみたいですよ」

 と佐藤さんが言った。

「早く観たいね」

 ハルが言った。

「ハル、子どもみたい」

 私が笑うと、みんなも笑った。

 飲み物が、先に来たので、それぞれ飲んでいると、

「佐藤さんも面白かった?」

 マスターが、聞いた、

「はい、面白かったです」

 と言った。

「好評で良かった」

 私が言うと、

「ゆりの勧める映画は、だいたい良い」

 と、ハルが言った。

「何、観たんですか?」

 佐藤さんが質問すると、

「クレイマークレイマー」

「渋いね」

 マスターが言った。

「名作ですよね」

 佐藤さんも言うと、

「みんな観てるんだ」

 とハルが言い、アイスクリームやフレンチトーストの話をしていた。

 昼食を終えると、マスターが佐藤さんを送った。

 私とハルは、デザートに、31アイスクリームを食べに、フードコートに行った。

「結構、年離れてるけど、マスターと佐藤さんいい感じだね」

 ハルが言うと、

「うん。ハルの友達、誰か紹介してもらおうと思ってたけど、必要ないかもね」

 私が言った。

「あと、ゆりのおススメ映画ないの?」

 ハルが、アイスクリームを食べながら言った。

「え、ハルも映画好きになった?家帰って、なにかDVD観る?」

「レンタルしてきて観ようよ、レンタルショップ行こう」

 私たちは、アイスクリームを食べ終えると、ハルの家に行って車を借りて、レンタルショップに向かった。

 車に乗ると、私が、

「ハル、ジョンウィック好きなら、好きかもしれない映画ある」

「なんて映画?」

「韓国映画なんだけど、アジョシって映画。ちょっとLEONっぽいところもあるかも」

「へぇー、それあるかな?」

「結構前の映画だから、あるんじゃないかな?」

「よし、それにしよう」

 レンタルショップに着くと、アジョシを探して、DVDを借りた。

 私の部屋に帰り、ベッドを背もたれにして、アジョシのDVDをノートパソコンで観た。

「ゆり、TVとDVDプレイヤー買おうか」

 ハルが言った。

「TVあんまり観れないからいいよ」

「観れないの」

「うん、無くていい」 

「そっか。病気のせい?」

「うん、そうだね」

 アジョシを観終わると、二人ともウルウルしていた。

「面白かった」

 ハルが言った。

「でしょ?良かった」

「あとは?なんかないの?」

 ハルは、また子どもがおねだりするように言った。

「今日は、もういいでしょ?」

「うん、これ返したら、またなんか借りる」

「ハル、はまり過ぎ」

 私が笑うと、

「えー、いいじゃん。今まであんまり映画、観たことなかったから」

「そっか、じゃあまた明日ね」

 私が言うと、

「明日また、借りに行こう」

 と言った。

「じゃあ次は、ボーンシリーズか、ミッションインポッシブルにしよう」

 と私は言った。

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