第16話

めざましが鳴った。7時だった。私は、起きたがハルは、全然目を覚まさない。 

「ハル、起きよう!」 

「ゆり~」

 と、寝言のように言っていた。起きないので、私は、シャワーを浴びた。ドライヤーをかけていると、ハルがムクッと起き上がった。 

「おはよう!」 

「なんで起こしてくれないの?ゆり」 

「おはよう!」 

「おはよう」 

「ハル、全然起きないんだもん」 

「一緒にシャワー浴びたかったのに…」

 と言うと、凄い寝癖で、私に近付いてきて、キスをした。 

「頭、ぼっさぼさ」

 私は、ゲラゲラ笑った。するとハルは、床に座り、 

「昨日ゆり、すぐ寝ちゃうんだもん」 

「だって、気持ち良かったんだもん」 

「いつもあんなにすぐ、寝れるの?」 

「夜中、目覚めたけど」 

「起こして良かったのに。だってさ…初めての夜じゃん」 

「正確に言うと、2回目だけど」 

「あれは、付き合う前だから、カウントなし!」

 私は、ドライヤーを置いて、床にそのまま正座して、ハルに言った。ハルも正座した。 

「あのね、お医者さんに避妊してくださいって、言われてるから、覚えておいて。薬飲んでるから」

 ハルは、膝に手を置いて、 

「わかった」

 とハルは、真面目な顔で言った。 

「シャワー浴びたら?」

 私は、ハルのボサボサの頭を触った。 

「うん、わかった」

 ハルがシャワーを浴びている間にいつものように、朝食の用意をした。 

「ゆり~、タオル貸して~」

 と、お風呂のドアを少し開けて言った。 

「ごめんごめん」

 と言って、ハルを見ないように、バスタオルを渡した。 

「ゆりの手料理?」

 ハルが頭をバスタオルで、拭きながら言った。 

「全然、料理じゃないけど」 

「食べよう!」

 二人で向かい合わせに座って、朝食を食べた。 

「もっとゆりって、俺なんか、寄せ付けない感じかなと思ってた」 

「え?どうして?」 

「マスターみたいなさ、大人の方がいいのかなって」 

「ハルだって、大人でしょ」 

「俺の事、好き?」 

「好きだよ」 

「夢じゃないよね」 

「うん、現実」 

「俺の方が好きだな、きっと」 

「何それ?」

 私は、笑った。 

「幸せにするから」 

「うん」

 と言ってキスをした。ハルは、本当に嬉しそうだった。 

「ハル、好きよ」

 と私は、もう一度言った。

 ハルは、お店があるので、9時前には、部屋を出た。 

「今夜も来ていい?」

 ハルが聞いてきた。 

「いいけど、明日は、9時から仕事」 

「短くてもいい、ゆりと一緒にいたい」 

「パジャマ持ってきてね」 

「えー、要らないかもよ!」

 ハルが、いたずらっ子のような顔で言った。 

「ハル、耳赤い!」

 と私が言った。ハルは、慌てて両耳を触った。 

「じゃあ、また後でね」

 とキスをした。 

「いってらっしゃい、仕事頑張って!」

 と言って送り出した。私は、幸せな気持ちだった。

 仕事の前に、部屋の合鍵を作った。ハルに渡そうと思っていた。 エルフの看板は、出ていなかった。

 仕事が終わると、ハルが迎えに来てくれていた。パジャマを入れているのか、リュックをしょっていた。 

「お疲れさま」 

「ありがとう」 

「どっか、寄るとこある?」

 ハルが言った。

「夕食どうする?」

 私が言うと

「お弁当買っていこうか」

 ハルは言うと、モールの中のお弁当屋さんで、買い物をした。

「帰ろう」 

 とハルは、左手を出した。私達は、手を繋いで歩いた。

 するとハルが、私の知らない道に入っていった。 

「こっちの方が近道だよ」 

「ヘぇ~」

 とついていくと、本当に私の家がすぐだった。 

「さすが、地元だね」 

「でも、夜は、ダメだよ」

 と、言った。 

「なんで?」 

「飲み屋街だから、酔っ払いがよってくるから」 

「うん、わかった」

 部屋につくと、私は、 

「はい、プレゼント」

 と言って、グーにした、右手を出した。 「え?何?」

 ハルは、リュックを下ろしながら、両手を出した。

「この部屋のカギ」

 私は、言った。 

「ありがとう」

 とハルが言って、私を抱き締めた。 

「ねえねえ、一緒にお風呂入ろうよ!」

 ハルが言った。 

「狭いよ」 

「いいじゃん」

 と、言いながらカーテンを閉めて、部屋の灯りをつけた。

 ハルは私をお姫様だっこすると、ベッドに横たわらせた。そして、まず足を揉んでくれた。 

「ゆり、ずっと立ちっぱなしだから、足疲れるでしょ?」 

「うん、ビックリするくらい、足パンパンになる」 

「俺、店番、結構サボってるから、大丈夫だけど」 

「三代目、それはいけませんね」

 と私は、笑った。 

「って、油断させといて」

 と言ってキスをした。 

「なんかずるい」

 私は、言った。 

「ゆりの事ばっかり考えてた」 

「私も」

 ハルは、私の耳元で、 

「ゆり、愛してる」

 と言ってキスをした。

 二人で入るバスタブはやっぱり、狭かった。ハルが、入浴剤を入れてくれた。

「ゆり、髪の毛サラサラだよね」

 ハルが私を後ろから抱き締めるようにして言った。 

「ハルは、寝癖酷いよね」

 と言って笑った。 

「でも、可愛い」

 と私が言うと、 

「それ、誉めてるの?」

 と聞いた。 

「可愛いって、言われるのイヤ?」 

「ゆりだったら、許す」

 と言って笑った。身体も心も温まるような気がした。

「うちで働けばいいのにな」 

「本屋さん、良いよね、なんか」 

「ゆりには、いつも側に居てほしいな」 

「どこも行かないから、安心して」

 二人で、髪と身体を洗いあって、お風呂を出た。

 私達は、暫くバスタオルのままでいた。二人とも、のぼせ気味だった。炭酸水をゴクゴク飲んでいた。

 パジャマに着替え、お弁当を食べ終えると、ベッドに座って、coldrainのLIVEのDVDを観ていた。 

「これ、ゆり守るの大変だな」

 とハルが言った。ダイブとかしていたからだった。 

「え?楽しそうじゃん」

 と私は、笑った。 

「ゆり、意外と胸デカいしな」 

「なにそれ?」 

「ずっと、触ってたい」 

「エロハルだ!」 

「変な名前で呼ぶな」

 と、ハルは、私の両頬をつまんだ。 

「あ、そうだ、アイス食べる?」 

「うん」

 私は、冷凍庫から、ハーゲンダッツのパイントを出して、スプーンを2本持ってきた。 

「ゆり、雑。そのまま、食べるつもりでしょ?」

 ハルが、私に指を指して言った。 

「えー、クレイマークレイマーみたいでしょ?」 

「なにそれ?」 

「映画だよ、知らない?今度見よう」 

「うん」 

「いっぱいお互いの事話そうね」

 と私は、パイントから直接アイスを食べながら言った。 

「うん」

 ハルも一緒にアイスを食べた。 

「もう、眠たいかも」

 私は、言った。時計は11時を回っていた。

 ハルが、ノートパソコンを消して、 

「寝ようか」

 と言って、二人で歯磨きをして、ベッドに潜った。

 寝ぼけながらも、ハルは、私を抱き締めた。

 私は、ハルに恋してる。と思っていた。愛しく感じる。ずっと、一緒にいたいと思いながら、眠りについた。

 次の日の朝は、ハルが先に起きていて、フレンチトーストを作ってくれていた。 

「おはよう!いい匂い」 

「おはよう、ゆり!」

 寝癖の酷いハルが近付いてきて、キスをした。 

「クレイマークレイマーみたい」 

「また?俺今日、借りてくるわ。気になる」  

私は、笑った。

 二人で、フレンチトーストを食べた。 

「美味しい~!」 

「俺、研究したもん、フレンチトースト」

 ハルが、頬を膨らませて言った。 

「好きなんだ」 

「うん」

 ハルは、自信満々の顔で言った。

 私は、身支度を整えると、 

「先に出ていい?」

 と、ハルに聞いた。 

「俺も、一緒に出る」

 ハルが、急いで言った。 

「うん」 

「送ってくよ」 

「ありがとう」

 ハルが、寝癖を直して二人で部屋を出た。 

「寝てても良かったのに」 

「ゆりと居たいから」 

「そう?」

 私達は、手を繋いで、近道を通って、ショッピングモールに向かった。 

「じゃあ、行ってきます!」 

「行ってらっしゃい」

「ハルも仕事頑張って!」 

「うん」

 二人で手を振って、別れた。

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