第24話

12月に入り、待ちに待った、coldrainのLIVEが、近付いていた。

 通勤時は、いつもcoldrainを聴いていた。道には少し雪が積もってきていた。

 私の職場はすっかり、クリスマスの装飾で、キラキラしている。

 今日は、ハルが泊まりに来る。

 明日は、休みをもらいcoldrainのLIVEに参戦する日だった。

 ハルは、いつものように夕食を作って部屋で待っていてくれた。 

「おかえり~」 

「ただいま~」

 私が言うと、ハルは、 

「お疲れさま」

 と言ってくれた。

 夕食を終えると、二人でお風呂に入った。 「明日、楽しみだね」

 ハルが、バスタブの中で言った。 

「うん、私、大丈夫かな?」 

「どうして?」 

「気絶したりして」 

「まさかぁ。俺が付いてるから大丈夫だよ」 「LIVEなんて、10年ぶりくらい。凄い久しぶりだし、色々熱そう」 

「そうだね、なるべく端っこにいようか」 

「うん」

 二人とものぼせ気味で、お風呂からあがった。炭酸水を飲みながら、予めネットで、入手していた、coldrainのTシャツとタオルを用意していた。

 その日は眠る前にベッドの中で、二人でLIVEのセットリストを考えながら、眠りについた。

 LIVE当日、私たちは、早めに夕食を済ませ、4時くらいに部屋を出て、タクシーでLIVE会場に向かった。

 会場に着くと荷物をロッカーに預けて、Tシャツだけになり、タオルを首に巻いて、LIVE会場に入っていった。

 まだ始まっていないのに、会場は、想像以上の凄い熱気に包まれていた。

 私達は、モッシュに巻き込まれないように、中間位の左端に落ち着いた。

 ハルは、もう私を後ろから抱き締めている。 

「ゆり、大丈夫?」 

「ハル、くっつくの早くない」 

「いいじゃん」

 LIVE中は、会場中、ジャンプやヘッドバンギングで、みんな汗だくになっていた。私たちも汗だくだった。イントロが始まるたびに、歓声があがった。

 ステージが思いの外近くて、メンバーの息遣いも聞こえそうな程だった。

 masatoが、

「道産子~」

 と叫ぶと会場が、一段と盛り上がっていた。

 ハルは、ずっと、私を守るように抱き締めていた。

 LIVEが終わって、会場をあとにすると、興奮気味にハルが、 

「サイコーだったね!来て良かった」

 と言った。 

「私、眉毛無いでしょ」

 とべちゃべちゃな前髪を上げておでこを見せながら、ハルに言った。

 ハルが笑いながら、 

「ちゃんとあるよ」

 と言った。二人とも、お風呂上がりみたいだった。 

「早く着替えないと風邪ひいちゃうね」

 私が、ロッカーから出した上着を着ながら言った。

 タクシーで、私の部屋に着くと二人でお風呂に入った。

 お風呂上がりに着替えながら、ハルが、 

「8AM聴きたかったな」

 と言った。 

「masato、もう歌わないって、言ってたからね」 

「うん。でも俺にとって思い出の曲だな」

 私が首を傾げると、 

「ゆりに初めてキスした時の曲だから」 

「そうだね。あの時8AMかかってたね」

 と、夜景と月が綺麗だったあの夜を思い出した。なんだか、あの頃を思い出したら涙が溢れてきた。 

「ゆり?」

 ハルが私の顔をのぞきこんだ。 

「あの日、ハルの気持ちが、凄く嬉しかった」

 もう、号泣だった。

 ハルが、私を抱き締めて、何も言わずただ、頭をポンポンしていた。 

「俺も、凄く嬉しかった」

 私の涙が落ち着くまでハルは、私を抱き締めていた。

 ハルは、私の部屋に初めて来た時のように、おでこをくっつけてきた。そして、 

「ずっと、俺と一緒にいてね」

 と言った。

 私は、その体勢のまま頷いた。

 もう、外は、雪景色だった。ハルの誕生日が、近付いていた。

 私は、何をプレゼントしようか悩んでいた。ハルと出逢ってからのことをよく考えてみると、喜ぶ物って、どんな物なんだろうと、考えていた。

 どんな寒い日も、マフラーは、していなかったなと思った。帽子をかぶっているのも、見た事が無い。

 そう言えば、眠る時に着ているパジャマは、ちょっとお疲れ気味かな?と思った。部屋着をあげようと決めた。

 出社時間より、少し早めに家を出て、ショッピングモールにあるテナントのアパレルショップを見に行った。ちょっと、コンビニにでも行けそうな、スエット生地の服を上下で選んだ。

 とてもお買い得な値段だったので、温かそうなマフラーも買って、ラッピングしてもらった。

 そして、職場に行った。

 仕事が終わり、家に着くと8時だった。 ハルへのプレゼントをみつからないように、クローゼットの奥にしまった。

 今日は、疲れたせいか、そのまま着替えもせず、ベッドで寝てしまった。

 はっと、目が覚めると2時だった。

 6時にベッドから起き上がり、シャワーを浴びた。

 スマホを見ると、ハルから、

"おはよー"とLINEが来ていた。

"おはよー。なんか、寝不足。"

 と返信した。 

"大丈夫?ゆり、俺居ないと寝れなくなっちゃった?" 

"そうかもね" 

"やっぱな~。仕事終わるの何時?" 

"6時かな?" 

"車で向かえに行くから、どっかで、食事しようよ!" 

"分かった" 

"じゃあ、仕事、頑張って" 

"ハルもね"

 私は、出勤する準備を始めた。

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