第6話「意外な共通点」

 体育祭の準備が本格化する中、ある日の昼休み。ちはやは友人の千夏と学食で昼食を取っていた。


「ねえちはや、応援団長の練習、順調?」


 千夏が心配そうに尋ねる。


「うーん、まあなんとか……」


 ちはやは曖昧な返事をする。その時、隣のテーブルから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「おい、それって『RADWIMPS』の新曲か?」


 振り返ると、そこには蒼太と友人の律がいた。律がイヤホンの片方を蒼太に渡している。


(え? 蒼太もRADWIMPS好きなの?)


 ちはやは思わず聞き耳を立てる。


「ああ、いいな。この曲」


 蒼太が感心したように言う。


「でしょ? 前のアルバムも良かったけど、今回のも最高だよ」


 律が熱心に話す。


 ちはやは思わず立ち上がっていた。


「ちはや?」


 千夏が不思議そうに見上げる。


「ごめん、ちょっと……」


 ちはやは蒼太のテーブルに向かって歩き出す。


「あの、蒼太」


「ん? どうした、ちはや」


 蒼太が驚いた顔で振り返る。


「その、RADWIMPSの話、聞こえちゃって……」


「ああ、聞こえてた?」


 少し気まずそうな表情を浮かべる蒼太。


「あんたも、RADWIMPSのファンなの?」


 ちはやの質問に、蒼太は少し照れくさそうに頷く。


「ま、まあな。お前も好きなのか?」


「うん! 大好き!」


 思わず大きな声で答えるちはや。周りにいた生徒たちが、二人を見て笑い出す。


「あ、ごめん。つい……」


 顔を赤らめるちはや。蒼太も少し赤くなっている。


「い、いや。別に謝ることないだろ」


 蒼太がぎこちなく言う。


「ねえ、好きな曲は?」


 ちはやが興味津々で尋ねる。


「『スパークル』かな」


「え!? わたしも!」


 思わず声を上げるちはや。二人は驚いて顔を見合わせる。


「へえ、意外な共通点があったね」


 律が面白そうに二人を見る。


「ふふっ、本当だね」


 千夏も近づいてきて、笑顔で言う。


「なんか、二人とも嬉しそう」


 からかうような千夏の言葉に、ちはやと蒼太は慌てて視線をそらす。


「べ、別に……」

「そんなことないだろ」


 同時に言い訳をする二人。しかし、どこか嬉しそうな表情は隠せない。


「ねえ、放課後みんなで聴かない? 新曲」


 律が提案する。


「いいね!」


 千夏が賛成の声を上げる。


「どう? 二人とも」


 ちはやと蒼太は、少し戸惑いながらも頷く。


「う、うん。いいよ」

「ああ、構わないぜ」


 昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

 

 ちはやは教科書を開きながら、小さく微笑んでいた。隣の席の蒼太も、何となく嬉しそうな表情を浮かべている。


(意外と、似てるところあるのかも……)


 そんな考えが、二人の心をほんの少し近づけた。


 放課後、四人で音楽を聴きながら過ごした時間。それは、ちはやと蒼太にとって、新しい思い出となった。

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