第2話「クラス替えの衝撃」

 春風が校庭の桜を揺らす4月。新学期の始業式を翌日に控え、鷹見ちはやは友人の桜井千夏と電話で話していた。


「ねぇ、ちはや。明日のクラス替え、楽しみでしょ?」


 千夏の明るい声に、ちはやは曖昧な返事を返す。


「うーん、まあね」


「もしかして、蒼太君と別のクラスになるのが不安?」


「はぁ? 誰があんなのと同じクラスになりたいって思うのよ」


 ちはやの声が少し裏返る。


「あらあら、素直じゃないんだから」


 千夏のからかうような声に、ちはやは頬を膨らませた。


 翌朝。

 

 ちはやは少し緊張した面持ちで校門をくぐった。


「おはよう、ちはや!」


 後ろから聞こえた声に振り返ると、千夏が笑顔で手を振っていた。


「千夏、おはよう」


「ねえねえ、クラス発表見た? 私たち、また一緒だったよ!」


 千夏の声に、ちはやはほっとため息をついた。


「良かった……って、えっ!」


 掲示板の前で固まるちはや。そこには、思いもよらない名前が並んでいた。


 2年A組

 ……

 鷹見ちはや

 鳴海蒼太

 ……


「うそでしょ……」


 呟いた瞬間、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「おい、ちはや。また同じクラスか」


 振り返ると、そこには少し困ったような表情を浮かべる蒼太が立っていた。


「な、なんで……」


「さあ? 運が悪いんじゃないのか」


 蒼太の言葉に、ちはやは思わず噛みついた。


「誰の運が悪いって言ってるのよ! あんたこそ、迷惑なんだからね!」


「はぁ? 俺だって別に……」


 二人の言い合いを、周りの生徒たちが笑顔で見守っている。


「まあまあ、二人とも」


 千夏が間に入り、収める。


「せっかく同じクラスになったんだから、仲良くやりなよ」


「誰があんなのと……」

「誰がこいつと……」


 同時に声を上げた二人は、ハッとして顔を見合わせる。そして、プイっと顔を背けた。


 始業式が始まり、新しいクラスに集まった生徒たち。ちはやと蒼太は、できるだけ離れた席に座った。しかし、時折視線が絡み合う。


 そんな二人を見て、担任の山田先生が小さくため息をついた。


「今年も大変そうだな……」


 クラス替えの衝撃は、まだ始まったばかり。これから始まる新学期に、二人の関係はどう変化していくのだろうか。

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