第26話「受験シーズン到来:互いを想う追い込み」
1月中旬、冷たい北風が吹きすさぶ中、高城高校の3年生たちは受験シーズンの真っただ中にいた。ちはやと蒼太も例外ではなく、それぞれの進路に向けて懸命に勉強を続けていた。
図書室。ちはやは参考書を広げ、必死に問題を解いている。その隣には蒼太の姿もあった。二人は無言で勉強に励んでいたが、時折互いの様子を気にかけている様子だった。
「ふぅ……」
ちはやがため息をつく。蒼太は心配そうに顔を上げる。
「どうした? 難しいか?」
「うん、ちょっと……」
ちはやの言葉に、蒼太は自然と体を寄せる。
「どれどれ……ああ、これか。ここはこう考えるんだ」
蒼太が丁寧に説明を始める。その優しい声音に、ちはやは思わずドキッとする。
「あ、そうか! ありがとう、蒼太」
笑顔で礼を言うちはや。蒼太も照れくさそうに頷く。
「いや、当たり前だ。お互い様だろ」
そう言いつつ、蒼太の目はちはやの問題集に釘付けになっている。
「ねえ、蒼太も頑張ってるね」
ちはやの言葉に、蒼太は少し驚いたような顔をする。
「ああ、まあな。お前ほどじゃないけど」
「そんなことないよ。蒼太、本当に努力家だもん」
素直な褒め言葉に、蒼太は顔を赤らめる。
「お、おう……」
二人の間に、柔らかな空気が流れる。しかし、すぐにまた真剣な表情で勉強に戻る。
時間が過ぎていく中、ちはやは時折蒼太の横顔を見つめていた。
(蒼太、こんなに一生懸命だったんだ……)
その姿に、胸が熱くなるのを感じる。
一方の蒼太も、ちはやの頑張る姿に心を打たれていた。
(ちはや、本当に強いな……)
そんな思いを胸に、二人は黙々と勉強を続ける。
帰り道、二人は並んで歩く。肩が触れ合うほどの距離で、しかし特に気にする様子もない。
「なあ、ちはや」
「うん?」
「受験が終わったら、どこか行かないか?」
蒼太の突然の提案に、ちはやは驚いた顔をする。
「え?」
「いや、その……ご褒美みたいな」
照れくさそうに言う蒼太。ちはやは、嬉しさで胸がいっぱいになる。
「うん、行きたい」
小さな声で答えるちはや。二人の間に、新たな約束が生まれた瞬間だった。
別れ際、二人は互いに「頑張ろう」と言葉をかけ合う。その言葉には、単なる励まし以上の、特別な想いが込められていた。
家に帰っても、二人の心は互いを思い続けていた。受験というプレッシャーの中で、二人の絆はより強固なものになっていく。それは、将来への不安を共に乗り越えようとする、静かな決意のようなものだった。
受験シーズンの追い込みは、ちはやと蒼太の関係をさらに深めていった。互いを思いやり、支え合う中で、二人の心はより一層近づいていったのだった。
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