第89話

2019年早々、僕はインフルエンザを発症。演劇祭の演出で過度のストレスを抱え、免疫力が低下していたのではないかと自分では思った。結局、新年最初の稽古は休むことになったのだが、この新年最初の稽古では、他にもインフルエンザにかかってしまい欠席するメンバーもいて、散々な状態からのスタートだった。

市民演劇祭の本番会場となる市民会館でのリハーサルが行われたのは、その後すぐのことだった。運営陣も同席し、搬入から搬出までを含めた一連の通しリハーサルが行われ、僕は音響席から、演出助手のAMは照明席から一連を見守った。

普段の公民館の会議室での稽古とは異なり、実際の会場で行うと、舞台転換の遅さや照明の調整、音響の音の大きさ、声のボリューム等、修正すべき点がたくさん出てきた。本番まで残り1ヶ月を切り、この状態で本番を迎えることが無事にできるのか、僕は総合プロデューサーであるKKからも忠告されるほどだった。


稽古を進めていったある日、僕は今回の主役の一人を務めるMUから、運営も兼任しているリーダーと副リーダーであるNRとTHが交際しているのではないかと質問をされる。LINEのトップ画がお揃いで匂わせていると指摘され、僕はふとカウントダウンイベントの帰りにすれ違った人影や、カラオケで音源収録をした際にTHの上着をNRが着ていたことを思い出し、合点がいったと思った。

ある稽古の帰り、AYとTHとファミレスに行ったとき、僕はTHにそのことについて尋ねてみた。案の定、二人は交際しており、僕は唖然とした。本人曰く、運営に入ったことで距離が縮まったとのこと。まあそういうことも可能性としてはあるだろうと僕は思っていたが、AYはもっと早くからこうなることを予想していたようだった。

市民演劇祭の本番まで2週間となった時、出演者の一人であるMKが仕事中に足を怪我したという報告があり、僕はまた不穏な気持ちになっていた。

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