第76話
ゴールデンウイークの真っ只中、僕は久しぶりに専門学校の同級生であるHMやYM、NMと共に、行きつけだった居酒屋に集まった。僕以外の3人は映像専攻だが、一緒に自主制作でドラマを作った仲である。思えば不思議と自分はシナリオ専攻だったのに、映像専攻との親交が一番深かったように思う。
東京のCG制作会社に勤務しているHM、地元の映像制作会社に就職しテレビ局への出向で情報番組やバラエティ番組の制作に従事しているYMとNM。お互い近況報告になる中で、会話の流れは自然と僕の市民ミュージカル出演の話題となる。作る側の人間だった僕が、とうとう出る側になったという話は、友人たちを騒然とさせた。当然一番驚いているのは、僕自身である。本当に本番を迎えることができるのだろうかと。
ゴールデンウイーク最終日の日曜日。オーディション会場となった公民館の会議室で、記念すべき1回目の稽古が始まった。最初ということもあり、自己紹介と発声練習や筋トレといった基礎的な内容だった。
16歳から29歳の男女13人が揃い、僕にとっては久しぶりに同級生ができたような感覚だった。夕方の休憩では、軽食を食べながら談笑に交じるようにした。学校の話や仕事の話をお互いにするのは、とても楽しい時間で、もっと仲良くなりたいと思った。
休憩後は、僕を含めた男性メンバー4人と、客演として出演することになった舞台俳優の方と5人で歌の稽古になったが、元々決して上手いわけではない歌なので、苦戦ばかりであった。
初回稽古は何とか終わったが、昼の13時から夜の21時まで1時間の休憩を挟んだ7時間の稽古は、運動神経が悪く、普段あまり体を動かさない自分にとっては体感時間が長いように思えた。ヘロヘロになって家に帰宅した僕は、そのまま深い眠りについてしまった。その翌朝、母に声をかけられて起きようと思ったのだが、全身を筋肉痛が襲い、体が起き上がらなかった。
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