第75話

思いがけない形で市民ミュージカルのキャストとなってしまったものの運営とのパイプ役という責務を果たすために何とかメンバーの一人としてやっていこうとしていた矢先の、千葉のプロデューサーからの突然の連絡だった。

聞けば、4日後に連続ドラマの撮影をすることになり、キャストもスタッフも決まっているのに、脚本がないと言うのだ。「え!?」と思わず声が出てしまった僕も、何があったのか状況が分からなかったが、とにかくプロデューサーが切羽詰まった状態であることは確か。おそらく他に決まっていた脚本家が降板し、急遽ピンチヒッターを僕に依頼してきたのだろう。概要としては、30分をCM挟んで3部構成にするという1話10分ドラマだが、撮影が4日後ということもあり、飲食店などを借りた撮影はできないという制限もある。電話相談の中で出た「公民館の会議室だったら借りられる」という話をヒントに、撮影の負担を少しでも減らすために、ワンシチュエーションかつモノローグやナレーションを多用する方向で行こうと決めた。


翌日に市民ミュージカルのキャスト顔合わせが控えていたが、とてもそれどころではなかったため、僕はKKに事情を話して顔合わせを欠席した。早速原稿用紙に向かって簡単なプロットや登場人物を殴り書きでまとめ、3話分の大まかなプロットを清書したデータをプロデューサーにメールで送り、内容の了承を得た。

翌日、市民ミュージカルのキャストとして決まったメンバーたちが顔合わせをしている中、僕はまずは1話の脚本を書き上げた。メールを送って一息ついたのだが、休み暇はなかった。実は、その1日の撮影で3話分を撮り終えなければいけないらしい。結局そのまま僕は2話と3話の脚本を書き上げた。3日後の晩、プロデューサーから無事に撮影が終わった旨を告げられ、僕は安堵した。思えばこれが、僕にとって、初の地上波ドラマの脚本担当作品となったのだ。

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