第74話

市民ミュージカルのオーディションの2日目は、KKがプロデューサーを務めていた市民映画にキャストとして出演していた21歳の青年のみが参加し、あっという間に終わってしまった。だが、3日目は女性7人、男性1人という大所帯となった。市民劇での舞台出演経験者や芸能事務所の養成所に入っていた経験のある者、中学校の英語教師、高校時代に演劇部に入っていたという者、大学の友人とバンド活動をしている者など、少なからず人前で何かをする経験をしている人ばかりが集まった。

男性が1人ということもあり、これもまた市民映画に出演したという舞台俳優の方が相手役として急遽参加したのだが、やはり経験者ということもあり、オーディションの相手役とはいえ声量がずば抜けていた。受付からオーディションの様子を見ていた僕は、その声のボリュームに圧倒されてしまった。


3日間に渡るオーディションが無事に終わり、そのまま審査会議となった。当初の台本では6人、今回のオーディション参加者はサクラとして入った僕も含めて13人。半分が落とされるものだと思っていたのだが、KKは会議の席で「せっかく来てくれた参加者なので、全員合格にしたい」と言い出した。それはつまり、自分も含まれているということになり、僕は思わず立ち上がって、自分も含まれているのかと確認をした。

メンバーと運営のパイプ役となる人もいたほうが良いという理由で、僕も思いがけない形でこの市民ミュージカルに出演することが決まってしまったのだ。最後に舞台に立ったのは、小学6年生の学芸会である。しかも、他の参加者はほとんど舞台や音楽の経験者ばかり。絶対的に足を引っ張る存在になってしまうと、僕はふと一抹の不安を抱えていた。

1週間後、メンバーの顔合わせが行われることになり、僕も当然参加するつもりだったのだが、そこへ映画を共に制作した千葉のプロデューサーから、非常事態だという連絡が突然届いた。

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