第88話

舞台稽古の一方、仕事の方ではラジオ番組を共にしている市議会議員の会報誌を制作するようになっていた。後援会の人たちに配布するため、表現をかみ砕いた内容になっており、今回が2度目の制作である。

脚本修正を経て何とか市民演劇祭のほうではキャストが確定し、12月に入ると通し稽古ができるようになった。また、衣装は予算がなかったため、一同私服が衣装となった。午前中から稽古する日もあり、その時に衣装合わせをすることに。色彩のチョイスが皆無の僕には、その衣装の判断もメンバーの力を借りること状態だった。

同時進行で、カウントダウンイベントの稽古もあったため、一同の負担は大きいものになっていた。

年末最後の稽古になり、偶然もNRは東京の打ち上げに行くと言って途中退席したのだが、その打ち上げというのが、僕が以前ドラマや映画で一緒に仕事をした千葉のプロデューサーが主催する打ち上げだった聞き、世間の狭さを感じた。

その一方、演出助手のAMの妻で2期生メンバーでもあったADが肺炎のため入院するというトラブルに遭遇してしまった。


カウントダウンイベントでメインどころのADが入院したものの、何とか本番直前には退院することができ、急遽カラオケの一室を借りて、来られるメンバーだけで最後の稽古が行われた。当日はリハーサルができないので、実質これが最後の稽古となった。セリフのやり取りやダンスの振り付けを、しっかりと最終確認をし、ついに大晦日の本番を迎えた。

一同衣装やメイクを完璧な状態にし、ステージに上がった。大晦日とはいえ、農場公園の大きなカウントダウンイベントということもあり、客席は満席だった。一つの本番が無事に終わり、年明けからの約1ヶ月は演劇祭一本に集中することになる。

帰宅すると、父が年越しそばを作ってくれていた。怒涛の一年が終わろうとしており、せめて三が日だけでもゆっくりしようと僕は心に決めた。

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