第81話
地元のフリーペーパーの夏号が完成して、ホッと一息入れる間もなく、市民ミュージカルの販売パンフレットの制作に追われることになった。写真の編集はそれほど負担もなく、プロダクトノートも普段の稽古に参加しているため、いつどんな動きがあったのかは把握できていた。
その中で一番作業に時間がかかったのが、KKとAYというプロデューサーと演出家による対談ページだった。見開きの2ページとはいえ、いくら合間に写真を入れても、レイアウトを組んだらそれなりの文章量になることは事前に分かっていたため、対談の内容も全部で4章にも及んだ。何より一番大変なのが、テープ起こしである。対談で二人がどんなことを話しているのかを、まずは文字に起こさなければいけない。その後、文字を再構成して口語体と文語体を混ぜながら、対談記事を書いていく。本番まで残り3週間もないのに、こんなことをしていて良いのだろうか、とふと自分に問いかけていた。
その翌週、僕は数人のメンバーと、共に舞台に立つ舞台俳優の方と共に、市民ミュージカルの告知のため、YouTube番組にゲスト出演をすることになった。運営兼任なだけに、こういうときどんなコンセプトでどういう経緯で結成されたのかは、資料やセリフを覚える必要がなく、自然と頭の中に入っていた。
MCとのトークの中で、一番嬉しかったのは舞台俳優の方に、「この役は彼しかできません」と話してくださったこと。配役が決まってから、時折自分にこの役が務まるのだろうかと自問自答したり、演出のAYに相談をしていただけに、この時の言葉はとても自信に繋がった。改めて、自分にしかできない役を演じてみせると心に決めた。
ついに本番まで2週間を切り、この間はひたすら通し稽古を重ね、直すべき箇所を部分的に稽古するという繰り返しだった。本番が近づいていく様を、稽古の中でひしひしと実感していき、やがて本番当日を迎えることになった。
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