第82話

ついに市民ミュージカル本番当日を迎えた。前日まで、会場のホールを別団体が使用していたため、前日仕込みができず、当日の朝からリハーサルを始めるまでの約2時間で会場と照明の仕込みをしなければいけなかった。運営スタッフ、そして関係者たちで寄せ集められたボランティアスタッフ総動員で準備が進められた。

照明や音響の準備を舞台上でしている同じ頃、2つの楽屋ではそれぞれ男性陣と女性陣のキャストが衣装着替えやメイクに追われていた。バタバタしていながらも、まもなく本番を迎えるのかと思うと、胸の鼓動も早くなっている。スタッフの方にメイクを手伝っていただき、衣装と被り物をつけて舞台に立つ完璧な状態になった。

一方会場前は、来場客の行列ができており、運営スタッフが中心となって対応に追われていた。その行列の中には、我が家の母と弟や、かつてシニア向けフリーペーパーの制作のときに様々なことを教えてくれたSRの姿もあった。


開場すると約200人の観客が場内に入ってきた。舞台袖からその様子を見ていると、いくら円陣を組んだとはいえ本当に緊張が止まらず、落ち着かない様子で地団駄を踏んでいた。それを見ていたメンバーたちからは、大丈夫と言われたもののそれでもやはり落ち着かない。

やがて開演となり、メインテーマと共に舞台袖から登場し、あれほど練習したダンスを披露。それが終わると、僕は一人で舞台センターに立って前説をした。それが終わり、本編が始まった。キャスト陣が、それぞれ稽古の成果を発揮している。始まって20分ほど経ってから、僕の初登場シーンとなった。舞台下手から登場すると、衣装とメイクのこともあってか、観客席からはドッと笑いが起こった。そこからはあっという間に時間が進んだ体感で、フィナーレを迎えた。

見送りや撤収が終わり、夜になるとキャストスタッフが一堂に会して打ち上げが行われ、それは楽しい時間であった。

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