第78話
個人事業というのは繫忙期の時はそれなりに忙しく、逆に仕事がないときは恐ろしいぐらい暇なものである。市民ミュージカルの稽古は日曜日だが、それ以外の曜日でセリフや歌、ダンスを個人で覚える時間も必要だった。とにかく足を引っ張らないようにしなければという気持ちで必死だった僕は、仕事の合間を縫っては個人練習をしていた。
この頃、地元のフリーペーパーの夏号制作は佳境を迎え、また千葉のプロデューサーからの依頼でもう一本ローカル局で放送される深夜ドラマの脚本執筆の準備をしていたのだが、更にもう一つ案件を担当することになった。それは、市民ミュージカル当日に販売する作品のパンフレットだった。KKから依頼を受け、僕は早速叩き台の台割構成を作り、提案をした。内容はあらすじ、相関図、キャスト紹介、プロダクトノート、使用楽曲の歌詞掲載、プロデューサーと演出家の対談となり、これ以外にKKが地元企業から協賛をもらうための広告枠が入ると、表紙裏表紙含めて20ページとなった。フリーペーパーも20ページなので、僕は同時期に2冊計40ページという冊子ものの制作を一人で請け負うことになっていた。
しばらくして、KKと知り合うきっかけとなったシニア向けフリーペーパーの編集会議が久しぶりに行われた。経費の都合で冊子での制作が厳しくなり、しばらく編集会議ができていなかったのだが、久しぶりの顔合わせで出された意見は、予算削減のために新聞のようなタブロイド紙で作るという案だった。だが結局これが最後の編集会議となってしまい、このフリーペーパーはフェードアウトする形で創刊準備号と1号目と2号目と合計3号発行して廃刊となってしまった。
その一方、様々なタスクに追われながらも市民ミュージカルの稽古は進んだのが、ここで体の限界が来たのだろう。メインテーマに合わせたダンスの練習中に、僕はめまいに襲われて倒れてしまったのだ。
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