第85話
9月も半ばとなり、選抜メンバーたちは月末に控えるライブに向けての稽古をしていた。その一方で、僕は市民演劇祭に向けてのスケジュールを立てようとしたのだが、演出経験がない僕にとっては、何を考えて良いのかさっぱり分からず、結局、夏の市民ミュージカルの振り付けをしてくれたAMが演出助手として就くことが決まった。
作品の演出のことも考えなければならず、その同時進行で運営全体のこともしなければいけなかった。KKから公共施設への団体登録を行うおう指示があったのは、ちょうどその時だった。団体登録には規約が必要で、それをすぐに作成するようにという指示があったので、僕はHAにその旨を伝えたのだが、以前の会議で団体規約作成の優先順位を後回しにされたこともあったHAは、結局作ることになるのだからと呆れていた。元々、シニア向けフリーペーパーの繋がりで関わることになったHAだが、フリーペーパーの活動がなくなった今、KKと共に活動する目的がなくなったと、団体規約作成後に、運営から退いてしまった。
トラブルは重なるもので、高校2年生のメンバーで市民演劇祭のキャスティングも予定していたRKが、本番の日が模試と重なるために参加できないと報告があった。結局、登場人物を削る形で、台本も書き直さなければいけなくなった。演劇の場合、キャスト先行であらかじめ決められた人数の中で、その人数分の登場人物を作らなければいけないため、キャストの都合で台本にも影響が及ぶことを、僕は痛感していた。
9月末、ライブハウスでの歌唱ライブが行われた。この日は、元副リーダーだったAMのグループ最後のステージである。参加メンバーと僕で寄せ書きを書いて、ライブ終了後に本人に渡して、記念撮影もした。メンバーが1人いなくなることは寂しい思いでもあったが、僕はこの時、市民演劇祭のことが頭の隅から離れず、何とかスムーズに稽古を進めていきたいと思っていた。
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