第90話
本番を2週間前に控えてのMKの足のケガは、出演者一同を動揺させた。幸いにも大怪我という程ではなかったものの、事前に演出助手のAMと共に、MKと共演シーンのあるTHや2期生メンバーのSYの4人で演出の変更の可能性について相談をすることになった。MK本人曰く、大きく足を使う芝居がないため影響はないと言っていたが、演出としてはもし何かあっては困るという理由で、稽古の間は一旦代替案である、上手から電話をするシーンを単体で表現するという手で乗り切ることになった。
またその同じ日、午前中は福祉センターで稽古をしていたのだが、主役の一人のMUがまだ来ていなかった。ちょうどその時、公民館から連絡があり、MUが待っていると聞かされた。スマホを忘れてしまったMUは、公民館で朝から稽古があると思い込んでしまい、ずっと待っていたそうである。稽古場がいつもと違う話をあらかじめすれば良かったと、自分で責任を感じてしまっていた。
やがて本番当日となった。MKのケガは本番まで影響がなかったため、当初の演出通りで行くことになった。運営陣が見守り、卒業した1期生の元副リーダーAKも来場客として見に来てくれた。音響の準備、照明の準備、そして舞台上の準備が完璧に終わり、一同円陣を組んだ。8月から始まった約5ヶ月半の稽古は、いくら週1とはいえとても長いものだった。音響オペをしながら、僕は約50分の演目を精いっぱい演じるメンバーたちに感慨深いものを感じていた。
舞台の緞帳が下がり、滞りなく演目は終了。来場者の中には、涙を流してくださっていた方もいた。一同が集まって締めの挨拶をして解散をした後、僕はKKに、3月いっぱいで代表を下りることを告げた。やはりこの団体はKKのもので、KKが代表としての決定権を持った総合プロデューサーになるべきだと、僕の考えを述べた。そして年度末、僕は代表を下りて、運営専任スタッフとなった。
男、突っ走る!(事業発展篇) 壽倉雅 @sukuramiyabi113
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