第69話
12月上旬になり、ついに地元のフリーペーパーが完成し、僕は配布をしながらも、次の春号に向けての準備に追われていた。12月となると、世間ではすっかり忘年会シーズンとなっており、僕もちょうど専門学校の友人たちから忘年会の誘いが来ていたり、映画製作で一緒になったプロデューサーから、キャストスタッフ陣やプロデューサーと繋がりのある同業者が集まる忘年会の誘いがあった。
12月中旬になり、僕はその忘年会に参加するために、午前中の高速バスで名古屋を出発し、夕方には新宿駅に着いた。久しぶりの東京であることをSNSで呟き、集合時間までまだ時間があるのでどこかで時間を潰そうかと思っていた矢先、HMから突然電話が来た。新大久保に来ているのだが電車が止まってしまい、歩いて新宿駅に向かっているというのだ。新宿駅で集合し、忘年会までの小一時間、近くの喫茶店で久しぶりに話をした。思えば、二人きりで話すのは、3月末に共に行きつけの居酒屋に行き、告白をして以来だった。
それから2週間が経過し、専門学校の忘年会が開催されることになり、僕らは金時計で集合をした後、居酒屋へ行った。忘年会ということもあり、お盆の時以上のメンバーが集まり、同期に限らず後輩たちも参加した。
会が中盤に差し掛かり、それぞれ飲酒をしながら談笑している。たまたま僕はHMと席が隣になり、周囲が騒がしくなりながらも一緒に話をしたのだが、そこでHMは「今でもあの時のことは嬉しかった」と言われ、一瞬動揺してしまった。だが、事業を始めてからのこの約9ヶ月、自分のことで精一杯で恋愛なんてしている暇はなく、僕自身も今となってはあの時付き合わなくて良かったと思っていた。それはHMも同じで、仕事でバタバタして恋愛どころではないと苦笑していた。今大事なのは仕事で、学生時代のように腹を割って話せる友人関係が一番であると改めてお互いに実感をしていた。
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