第71話

KKによる市民ミュージカルの準備は着々と進み始めた。元々市民映画のプロデューサーを務めていただけに、地元出身の劇団主宰者や映画監督、カメラマン、舞台俳優、音楽プロデューサーといった同業関係者との繋がりも深く、普段フリーペーパーのスタッフとして一緒に仕事をしていたKKの本来の姿を見ることができた。

運営としては、KKや僕のほかに、共にフリーペーパーのスタッフをしているWEB担当者のWH、脚本・演出担当のAY、作曲担当の音楽プロデューサーのHH、会計担当のTHという6人で構成された。

市民ミュージカルの本番は8月上旬、基本的には毎週日曜日が稽古、逆算するとゴールデンウイーク明けからは稽古を始めなければいけないスケジュールで、そのためにはキャストオーディションは4月中、そのオーディションの告知はなるべく早い方が良いという結論になった。


僕はこの市民ミュージカル企画でも議事録作成担当係となった。AYは地元出身だが大学進学を機に東京へ行き、向こうで劇団の主宰やテレビドラマの助監督をしており、昨年地元に帰ってきたばかりなのだが、舞台としての経験が豊富ということもあり、専門用語をたくさん使ってくる。議事録作成の中で、使った言葉をそのまま入れるのだが、自分には用語の意味が分からず、後からこっそり調べるという状態が何度も続いていた。ドラマや映画の脚本しか知らなかった僕にとって、舞台独特の表現方法もこういったところで勉強できるのではないかと思い始めた。

市民ミュージカルの運営会議に参加するために、僕は隣町に行き来する機会が増え始めた。フリーペーパーの会議は週1だが、市民ミュージカルの会議は多いときで週3のときもある。やがてその会議も、回を重ねていくたびにオーディション内容のことや、演目についての脚本の相談など具体的になっていった。その数日後、地元新聞にオーディションの告知記事が掲載された。

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