異形交房

　仕事の材料を得に向かったＯ神社の一の酉。
　帰り際、裏参道の鳥居前に、集会用サイズのテントを目にした良木（よしき）。
《脱走妻の小屋》―――ベニヤに書かれた名称に見世物小屋的匂いを嗅ぎとった良木は、テント幕をたぐった。
　広がっていた奇態な景色は、知識にあったものとはまったく異なっていた。だがそれでも、見世物には違いなかった。
　十二分に満喫し、出口へと向かった良木は、若い小屋番の異質極まりない姿に瞠目した。
　欲望の矛先が、「美」よりも「異」という性質であった良木は、再び彼女に逢うべく、二の酉にも足を運んだ。
　だが、テントは境内のどこにも立っておらず、しかも、手がかりを求めに寄った屋台の主人から、思いも寄らなかった言葉を聞く。
　そんなものは一の酉にも出ていなかった―――。
　小屋番に…続きを読む