第14話 ヴィトスVS魔王會系闇組織ダークバトラの息子Ⅳ
「殿下。
このオークどもはどうしましょう。
殺して土に埋めますか?」
「「「ひひいっ!?」」」
セラスの血も涙もない一言にギンバを始めオークたちが全員震えあがる。
「いや。
ダークバトラはそこそこ大きい組織だから構成員が沢山いる。
キンバたちを斬ればその人たちが困るよ。
それに跡目争いになっても面倒だ。
ギンバもちょっと調子に乗ってただけだと思うし、一度はチャンスをあげよう」
俺がそう言うとセラスは、
「はっ! 全ては殿下の御心のままに!」
俺に頭を下げる。
俺はギンバの前に立つ。
「ギンバ。
うちのギルドに資金提供してくれてるのは有難いけれど、それを恩に着せて受付嬢にセクハラするのは違うよね。
他にもいろいろ悪さをやってると思うんだけど、とりあえず全部止めてほしいんだけど」
淡々と言った。
近場のソファーに寝かせていたアムさんを見やる。
今回は未遂で済んだから良かったけれど、もし彼女に危害が及んでいたなら冷静では居られなかったかもしれない。
セラスがキレてもヤバいんだけど、俺がキレるともっと大変なことになる。
「はっ、ハヒィイイイイイッ!!?
もうしわけありませんでシタッ!!
二度とこのような事は致しまセンッ!!
これからはギルド様にも謹んで支援させて頂きまスゥッ!!」
ギンバはめり込むぐらい額を地面に押し付けると、尻を高く突き上げて叫んだ。
「うん。
でも魔族には口だけって奴が多い。
反省したかどうかは行動で判断するからそのつもりでね。
それとキンバ。
君も會長なんだから、二代目の行動には責任を取るように。
じゃないと他のオークたちも路頭に迷うことになる」
俺がそう言うと、
「はっ……ははあああああアッ!!!」
「かしこまりました!!!
仰せの通りに致します!!!」
とりあえずキンバ達に誓わせる。
ただこれだけだとデメリットだけだから、メリットも与えておくか。
そうすることで悪さをする確率がグッと少なくなる。
「真っ当に結果出せば、取り立てて上げるからね」
俺が優しくそう言うと、
「「「か……寛大なお言葉あああああ!! ありがとうございますうううううううッ!!!」」」
キンバたちが吃驚した様子で俺の顔を仰ぎ、何度も平伏して地面に額を擦り付けた。
これで悪事はしなくなるだろう。
「素晴らしいお裁きに御座います!!
ヴィトス殿下!!
このセラス感服いたしましたッ!!」
セラスも俺に俺に言ってきた。
どうやら彼女も満足してくれたみたい。
□□
ギンバによるギルド脅迫事件の翌日。
俺がいつものように仕事をしていると、
「ヴィトスくん」
背後から声を掛けられた。
アムさんだ。
受付嬢の制服である、タイトなスカートにドレスシャツを完璧に着こなしている。
相変わらずカワイイ。
「昨日は本当にありがとう。
お陰で私も皆も酷い事されずに済んだわ。
ヴィトスくんって頼りになるのね」
アムさんが俺に微笑みかけて言った。
昨日は結局アムさん中々目を覚まさなくって、仕方なくセラスにお願いして彼女を自宅まで連れて行って貰ったのだ。
一方俺は仕事もあるのでギルドに戻って皆に説明したんだけど、詳しい事情を知らないギルドマスターから『勝手な事するな』ってこってり絞られたり、後はジャンクや他の受付嬢からも心配されまくったりしてホント大変な一日だった。
アムさんの笑顔見れれば全部吹き飛ぶけどね。
「いえいえ。
結局うちの人がなんとかしてくれたんで。
俺はなんもしてないです」
「そうだったって聞いてるわ。
でもあの怖いオークたちに連れて行かれそうになった時、ヴィトスくんが来てくれて本当に頼もしかった。
平然としてるし、度胸あるのね」
「いやあそれほどでも」
俺は後ろ頭を掻きながら言った。
ダメだ。
アムさんに褒められると調子に乗ってしまう。
そんな風に俺がご機嫌になっていると、
「それでなんだけれど、よかったら今晩食事に行かない?
この間助けてもらった時のお礼もまだだし、よければご馳走したいんだけど」
アムさんが言った。
あれ。
これってもしかしてデートの誘い?
「え! いいんですか!?」
「もちろんよ。
ヴィトスくんが空いてたらだけど」
断る理由があるはずも無かった。
しかもこないだはランチって約束だったのに、いきなりディナーとか緊張する!
「ぜひぜひ! 行きましょう!」
「じゃ、仕事上がりにギルド前の噴水で」
それだけ言うとアムさんは受付に戻っていった。
よっしゃ!
速攻で仕事終わらす!!
□□
その日の夕方。
噴水前で落ち合った俺とアムさんは、町の繁華街にあるレストランにやってきていた。
店内には川が流れ、南国に生えていそうな樹があちこちに植えられている。
客席同士も大分離れているので、落ち着いて話ができそうな雰囲気のお店だった。
執事風の恰好をした店員がやってきて、席へと案内される。
「アムさん。いいお店知ってますね」
「女子会でたまに食べに来るの。
前からヴィトスくんにも紹介したいって思ってたんだけど」
そんな話をしながら、席に座る。
俺はさっそくメニュー表を手に取ると、
「好きなもの食べていいですからね。
とりあえずこのページの全部いっちゃいます?」
中身をアムさんに見せながら尋ねた。
そんな俺を見てアムさんがクスっと笑う。
「私が奢るって言ったじゃない」
「あ、そうだった。
ついいつものクセで」
セラスが大食いだから、レストランに来ると大体店のメニュー片っ端から注文するんだよな。
ママスもお酒大好きだし。
「いつもそんな注文の仕方してるの?
ヴィトスくんってホント変わってるわよね」
「そうかな?
自分ではフツーだと思ってるんですけど」
そんな話をしながら、互いに注文を済ませる。
「そういえば、私ヴィトスくんの家の事ってあんまりよく知らないのよね。
今回も家の人が駆けつけてくれたって聞いたけれど、どんな人たちなの?」
するとアムさんが俺に聞いてきた。
家の事は殆ど話していない。
「えっと」
どう説明しようかな。
まあ普通に説明すればいいか。
なんて思っていると、
「お!? めっちゃ可愛いオンナいるじゃん!!」
急に店内が騒がしくなる。
振り向けば、店の入口の辺りにガタイのいいトカゲ頭の男たちが立っている。
トカゲの頭に人間の体を持つ、いわゆるリザードマンと呼ばれる種族だ。
全員鍛えた体を誇示するかのように半裸である。
しかも既に酔っぱらっているのか、顔が赤くなっている。
「おい姉ちゃん!
俺らこれから酒飲むんだ。
こっち来て酌しろや!!」
そのうちの一人が近づいてきて、強引にアムさんを誘った。
また面倒そうな奴らが来たな。
思って息を吐く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます