第13話 ヴィトスVS魔王會系闇組織ダークバトラの息子Ⅲ
「死ね」
セラスが必殺技を放とうとしていた。
たしか『
セラスの三大必殺剣の一つで、斬った相手を魂ごと消滅させるという技だ。
通常この世界の生き物は死んでも別の生物として転生するのだが、セラスのこの技はそれを許さない。
無慈悲と言えるだろう。
しかも斬った際に斬撃が百メートルぐらい飛ぶので大変危険だった。
他の屋敷や通行人に当たるかもしれない。
「待った」
当然そんな事をさせるわけにはいかない。
俺は咄嗟にギンバの前に割り込むと、セラスが振り下ろした剣先を指の腹で受け止めた。
威力は完全に殺したが、剣圧だけで衝撃波が起こる。
爆風は辺りの瓦礫を吹き飛ばし、俺の足元の地面をすり鉢状に凹ませてしまった。
「ウギャアアアアッ!??」
ギンバもベシャっと地面に叩きつけられる。
「はっ!?
殿下!?
申しわけございません!!?」
途端にセラスが剣を捨てて俺の指先に触れてくる。
俺を傷つけたかもしれないと思ったのだろう。
今さっきまでのブチギレようはどこへやら。
顔面蒼白だった。
「大丈夫。
かすり傷一つないから」
俺がそう言って指先を見せると、
「私の転生断を受けてかすり傷一つ無いとは……ッ!
殿下!!
さすがに御座います!!」
セラスが嬉しそうに言った。
たぶん俺の強さを喜んでくれてるのだろう。
ちなみに特別な事をしたわけではなく普通に斬られただけだ。
セラスが魔力を込めた剣よりも俺の指先の方が魔力密度が高かったので、転生断を弾いてしまった。
その余波が衝撃波となって爆風が起こったのだ。
なんて俺が考えていると、
「フヒイイイイイイイイィッ!?」
やっと我に返ったのだろう、背後でギンバが情けない声を上げた。
恐ろしかったのか、股の間からは豪快に失禁している。
「セラス。さっき言ったばかりでしょ。いい加減怒るよ?」
ギンバはさておき、俺はセラスに注意をした。
威力もさる事ながら、彼女みたいな魔界の有力な魔族が人間の町を攻撃したなんて事になれば大問題になる。
「はい!
つい我を忘れてしまい……ッ!!
申しわけございません!!!」
セラスはその場に両膝を突いて土下座してきた。
俺のためを思ってしてくれたんだろう。
セラスに悪気はない。
「まあ俺が居てよかったけど。
こういうのは俺が居る時だけにしてね」
そう思い俺が許すと、
「ははッ!?
慈悲無限大なる殿下のお言葉……ッ!
このセラス心腹いたしました!!
この首に誓って必ず!!!」
セラスはそう言って、華やかな香りのする銀髪を掻き上げ、真っ白なうなじを俺に見せてきた。
だから首切ったらデュラハンになっちゃうじゃん。
ケイオスたちが困る。
「セラス……!?
まさかアナタ様は、魔王會大幹部にしてあのケイオスデュラハンをも従える『
俺が相変わらずのセラスの忠義っぷりに呆れていると、いつの間にやら立ち上がっていたダークバトラ會長のキンバが漫然とした顔で呟いた。
「そうだ。
私がその『セラス・サマ・エルス』だ」
セラスが名を名乗る。
「は……はあああああああああああッ!!」
キンバがその場にひれ伏した。
その様子を見てギンバも慌てだす。
「ぱ、パパ……!?
なにやってるの……!?」
「バカもの!!!
この御方はダークバトラが忠誠を御誓いしている『魔王會』の大幹部さまだ!!
つまりワシの上司だ!!!」
「うっげえええエッ!?
なんでそんな偉い御方がギルドの事務員なんかに首を垂れてるのサ!?」
ギンバが驚き、俺を指差して叫ぶ。
そういう言い方しちゃうとまずい気がする。
思って俺はセラスを見た。
案の定目が吊り上がっている。
「
こちらにおわす御方は魔王會の次期會長!!
ヴィトス殿下であらせられるッ!!」
セラスが俺を手の先で示して言った。
またこの流れか。
「ウソでショオオオオオオオオ!?」
俺の正体を聞かされ、ギンバがその場に跳びあがる。
會長のキンバは息子の頭を押さえつけて平伏させ、
「申し訳ありません殿下ああああああああッ!!」
自身も涙を流しながら額を何度も地面に擦り付けた。
「「「へっへええええええええええ!?」」」
いつの間にか起き上がってきた他のオークたちも俺に向かって平伏してくる。
まあ魔王會の二代目になる奴が事務員の恰好してるとは思わないだろうからな。
ちょっと可哀そうな事したかも。
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