第10話 魔王の息子、町強盗に遭うⅤ
一方その頃外では。
アムがジャンクたちと共に、まだ戦える冒険者たちを集めて『ヴィトス救出作戦』を決行しようとして集まっていた。
冒険者たちの先頭に立っているのはもちろんアムである。
彼女も受付嬢の制服の上から防具や武器を身に着けていた。
自分もヴィトス救出作戦に参加したいと申し出たのだ。
(早くヴィトスくんを助けないと……!
きっとあの人たちに酷い目に遭わされる……!)
深刻な顔でアムが思う。
「皆さん! 行きましょう!!」
言って、アムが先導切って歩き出した。
「ま、待てよアム!?
さっきすげえ音したし、それになんでか建物も直ってる気がするし、状況がわからねえよ!!
助けを待った方がいいんじゃねえか!?」
そんなアムを、ジャンクが言って止める。
見れば冒険者たちも全員怖気づいた顔をしていた。
当然である。
シャイアの町の冒険者は全員Cランク以下。
山賊ならともかく、その頭であるザムザを倒せる者など居ない。
「助けっていつ来るの!?」
「わ、わかんねえ……!!
この町唯一のクリスタフォンはギルドにあるから、連絡が取れなくてよ……!
今隣町まで走ってる奴が居るから、そいつを待って……!」
「そんなの待てないわ!
いつ殺されるか分からないの!!」
アムがそう叫んだ時、不意にギルド玄関の扉が開いた。
彼女が玄関を見ると、なんとヴィトスが盗賊たちを連れて外に出てくる。
しかも全員縄で縛られていた。
「え……!?」
「おい!? なんでアイツら縛られて……!?」
全く訳がわからない状況に、アムをはじめその場に居た全員がポカンとする。
その内に、ヴィトスのすぐ後ろを歩いていたザムザがアムたちに気付き、急に彼女たちの方へドスドスと走り寄ってきた。
後から他の盗賊たちも走ってくる。
そして、
「おッ……俺を捕まえてくだせええええええ!!!!」
「「「お願いしますうううううう!!!!!」」」
「「「早く安全な所へえええええ!!!!!」」」
総勢30名ほどの盗賊たちが、全員アムたちの前に身を投げ出して何やらよく分からないことを叫び出した。
「……どうなってるの……!?」
アムが呆然としたまま呟いた。
□□
一方ヴィトスはアムたちの元に向かいながら考えていた。
彼の視線の先で、縄で縛られたザムザらが『捕まえてくれ』と泣き叫んでいる。
アムさんたち驚いてる。
まあこの状況だもんな。
とりあえず説明しないと。
俺がそう思っていると、
「ヴィトスくん!?」「ヴィトス!」
アムさんとジャンクが俺の下に駆け寄ってきて言った。
二人とも完全武装している。
たぶん俺を助けようとしてくれてたんだろう。
ホントいい奴らだ。
「お前がやったのか!?」
冒険者たちに「捕まえてくれぇ!」泣きついているザムザたちを指差し、ジャンクが俺に尋ねてくる。
「ううん。じつは実家の魔法使いが来てくれて」
「魔法使い!?」
「そそ。めちゃくちゃ強い人で。代わりにやっつけて貰ったんだ」
ウソは言ってない。
ただその魔法使いの正体が魔族で、しかも魔界最大派閥の魔王會の大幹部って事実は伏せてるけど。
ちなみにママスは先に屋敷に帰してある。
「あの地震みてえのとか、ギルドの建物直したのもその人がやったって事か!?」
ジャンクがギルドを指差して言った。
「そうみたい」
俺は頷いた。
すると、
「そんな魔法聞いたことないぞ……!!?」
「もはや奇跡じゃないか……!?」
近くに居た魔法使いらしい冒険者連中がぼやく。
まあ普通魔法って言ったら擦り傷癒すとか火の玉作るくらいだもんな。
驚くのも当然か。
俺自身、天変地異くらいは簡単に起こせるのでそんなに気にしたことなかったけれど、改めてママスの優秀さを評価する必要があるな。
なんて俺が思っていると、
「ヴィトスくんの実家ってホントすごいのね……!」
アムさんが開いた口を手で隠しながら言う。
なんにせよアムさんが無事で何より。
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