第23話 恋愛相談?無駄無駄無駄無駄っ!!

「…なあ、京子どん」

京子「なにかね、三月どん」

時は10月の末、相も変わらず京子ちゃんの部屋で俺たちは漫画を読んでいた。


ついでにリビングでは、五月いもうととおかーさんが…今度はファーストガンダム劇場版三部作の観賞会を…「セイラさんのシャワーシーンが」とか「アーバオアクーのアムロの脱出シーンの音楽を変えるのは」とか…またコアな話題をっ!!


「…ちょっと相談に乗って欲しいのだよ…恋愛相談なんだけど」

京子「!恋愛相談!?乗る乗る!!」

「…」

…無駄だな…どう考えても無駄なことをやっていると…相談する前から達観している自分がいた…



「…おかーさん!あなただけが頼りなんです!相談に乗ってください!」

京子「…どういうことかな?…先輩?」

五月「そうだそうだ~!」


リビングルームに三人の女性。無駄に顔面偏差値だけはカンストしているのだが。


京子ちゃん…高校時代のお付き合いからそのまま彼氏彼女を継続中。

五月…小学生からの幼馴染みからそのまま彼氏彼女を継続中。

…つまり、京子ちゃんも五月もほとんど初恋を成就させちゃった上に恋愛経験は一人。

そんなのに頼るくらいなら自分で考えてたほうがましだ。

京子母「恋愛か~懐かしいな~。あたしも高校の入学式で同じクラスのパパと出会ったのよね」


…はい?


「ちょっと…待って…つまりおかーさんも初恋成就組…」

京子母「そうね!…初体験のときは苦労したわ。お互い初めてで」


…五月と京子ちゃんが、うんうん頷いているのを見て…俺は悟った。

…己の決定的な人選ミスを。


「…じゃあ、そういうことで今日はここまで…」

京子「…待ちなさいよ。ここまで風呂敷広げて終わらせるつもり?あたしたちに娯楽を提供しなさいよ!」

「…」


…娯楽ときたよ…無駄無駄無駄無駄っ!!


(ここからは京子ちゃん目線でお送り致します。)


三月「実は…愛子ちゃんから正式に交際を申し込まれました…」

「…ほう…」


安永愛子先輩…本社受付部の綺麗処の中でもトップの美貌を誇り、それでいて気さくで女性らしい性格…悪く言えば極めて受付らしい八方美人…

「…でも安永先輩には、確か長年付き合っている彼氏が…」

しかも妻子持ちとの不倫と噂される…


三月「…別れるんだそうだ…だからこそこれからの人生を一緒に生きて欲しいと」

京子母「まあ、ほとんどプロポーズじゃないの!」

三月「腐れ縁の親友関係を二年半続けてきてますのでね」

「…返事は?」

三月「…保留中。来週のお休みに富士山にドライブに行こうって話になっていて…そこまでね」



五月「…お兄、もう実乃里ちゃんのことは良いの?」

「考えてる…でも、昨年の音楽コンクールの世界二位の成績で…あいつのヨーロッパでの地位は確立したとも思えてね…俺たちの人生が交わることはもう…無いんじゃないかな…」

五月「…だったら…だったらあたしは南ちゃんとお付き合いして欲しい」

「…あそこまで落ち着いてきた南ちゃんを、またパニック症候群に陥らせるかもしれないんだぜ?」

五月「で…でもっ!お兄が誰かと付き合い始めたなんて南ちゃんが知ったら…」

「…それな…」


京子母「…ごめんなさいね?聞いて良いのかしら…まず、実乃里ちゃんと言うのは?」

五月「お兄の元カノです。この人」

そう言うと五月ちゃんはバックから一枚のCDを。


こ…このCDあたしも持ってる!


「嘘っ!?先輩の元カノって…フルート奏者の秋山実乃里さんなの!?」

三月「…ああ」

い…今まさに旬の…世界的なフルート奏者…


「何で!別れちゃったの!?」

三月「あの子の行った世界ヨーロッパは中途半端では決して生き残れない世界だ…だから別れた…『自分は決して待たない』とね…退路を絶ったんだ」

五月「そう言うお兄こそ…彼女作らないで待ってたくせに…」

三月「本当にどうなるかは…分からないと思っていたからね」

「…」

三月「でも…そろそろ良いかな…とも思いはじめていてね」

…先輩って、ずっとそんなこと考えてたんだ…

…でも…


「でもさ…安永先輩、本当に彼氏と別れられるのかな…」

不倫の恋は蜜の味とか聞くけど…噂で聞く限り三年以上継続しているのは…よっぽど相性が良いのだろうし。


「…あたしも、南さんのほうが良いと思う。そもそも何で南さんと付き合わないの?」

五月「昨年、お兄が一時期入院していたのご存じですよね」

「うん、通り魔に襲われて刺されたんだよね」

五月「…あれ、南ちゃんのストーカーの仕業だったんです。当時、私たち南ちゃんをストーカーから匿っていて…お兄逆恨みされちゃって」

「…」


五月「南ちゃん、パニックになって…お兄に対する凄い依存症になっちゃって…とても…二人を一緒にしておけなかった」

京子母「…そう」


三月「でもさ、五月…お前には知らない人だとは思うけど…愛子ちゃんだって相当に勇気を振り絞って…自分を変えたいと思ったんだと…」

五月「…」

三月「…それを無下にするのも…」


京子母「分かったわ!要は今の三月くんは現状維持が望ましそうね」

三月「でも…」

京子母「…セフレにしちゃいなさい!その愛子ちゃん」

三月「…は?」

五月「…は?」

「…はあっ?」


京子母「まずはお試しで付き合ったらって意味よ…セフレなら南ちゃんに今すぐ話すこと無いでしょ?」

五月・三月「「いやいやいやいや!」」


「…ママ、その考え…どこの韓国ふゆのそなたドラマから?」

京子母「…ばれた?」

「…やめい!」


三月「…だから言ったんだ…こんな恋愛相談…無駄無駄無駄無駄っ!!」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る