最終話 愛子ちゃんの裏切り…そして…
【胸糞な話です…ごめんなさい…】
あの日は…愛子ちゃんとのドライブの約束の3日前だった。
新宿で行われた本社と横浜支店の合同の飲み会が何で有ったのか…今では覚えていない。
ただ…上の人も参加する飲み会なのに、珍しく一次会からお座敷ではなく小洒落た洋風のバー、しかも席がいくつも分かれていたので、いつものイッキ大会になるではなく、幹事が必要な訳でもなく…俺はず~っと愛子ちゃんと二人で…最後まで二人で話していた。
(京子ちゃんは当然の如く不参加。夏美先輩は田村とベッタリ。弘美ちゃんの姿は見えなかったが多分長谷川先輩と一緒だったのだろう。)
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愛子「…別れたから、やっと」と愛子ちゃんは何度も俺に微笑んだ。
「今度のドライブを本当に楽しみにしている」と…「三月くんの返事を待っている…やっと三月くんだけと真摯に向き合える」と。
俺たちは二人だけの世界を作って、21時の閉会と共に別れた。
愛子ちゃんは二次会を女子会で過ごすと言い、俺は中島たち仲の良い若手に捕まってカラオケに連れていかれた。
カラオケと言っても、どちらかと言うと俺の小突き上げ大会。
さんざん愛子ちゃんとのことをからかわれて、三時間も良く同じ話で盛り上がれるなと。
それでもみんな祝福してくれて…参加した奴らは俺と同期かその下だったから…今考えるとどいつも社内事情には疎かったのだろう。
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終電では帰ろうと、俺たちは12時に解散した。
魔が差した…でなければ神様のいたずらだろうか…
…夜風に当たって帰ろうと思ったんだ。
俺は、幡ヶ谷のマンションまで、歩いて帰ることにした…素直に電車で帰れば良いものを。
新宿西口駐車場…今で言う都庁下駐車場の前から西新宿温泉(今は無い)の横を通り山手通りに向かう途中には綺麗なラブホテルがある。さすがに会社にも幡ヶ谷のマンションにも近いので使ったことは無いけど、あることは昔から知っている。
本当にどんなタイミングなんだろうな…そのラブホテルから…俺の目の前に…見知った男女が出て来た。
腕を絡め合う二人は…当然事後だったのだろう…俺の前を睦まじく歩いていく。
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愛子ちゃんとは…告白されたあの日、身体を合わせていた。
だからこの日も、女子会とかカラオケとかそんなの放っておいて、身体を合わせれば良かったのかもしれない…もっとも今の状況を考えれば…何か理由を付けて断られていたかも知れないけどさ…
「(女ってこんなもんなのかな…)」
後で考えると、随分女性に対して不敬な事が思い浮かんでいた気がする。
劉ちゃんは戻って来なかった…あんなに…あんなに病気を治して帰ってくるって…約束したのに。
ゆうこちゃんは戻って来なかった…九州から戻って来なかった。彼女はむこうで出来婚した。
俺は…ゆうこちゃんを寝取られたんだよな…
実乃里ちゃんは戻って来なかった…ヨーロッパから戻って来なかった。
きっと実乃里ちゃんだって今頃はむこうで…
「(女なんて…こんなもんなんだろうな…)」
冷めていった…愛子ちゃんに…だけではなく…
だけどそれ以上に…!!
今考えても何故声を掛けてしまったのか思い出せない。絶対に声を掛けるべきては無かったと何度考えても思う。
だけど…愛子ちゃんの事なんて心のほんの片隅で…俺の心を占めたのは、無邪気な春ちゃんの笑顔だったんだ…だから!!
「…何…やってんだよ!竹村さん!!」
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あの瞬間、振り返った二人の顔は思い出せない。
そもそも、俺は愛子ちゃんの顔なんか見ていなかった。ただ竹村さんを見ていた。
愛子ちゃんの長年の不倫相手だったであろう
死ぬほど二人を罵倒した。何を言ったのか良く覚えていない。
二人は何も反論しなかった…一言も。
だから…最後に言ったんだ…
「春ちゃんが可哀想だ…春ちゃんに何て言うつもりなんだよ…竹村さん!!」
そう言って逃げるように俺はその場を離れた。
二人…竹村さんと愛子ちゃんがその後どうしたのか…俺は知らない。
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嘘みたいだけど…3日後、愛子ちゃんとドライブには行ったんだ。
二人とも何にも無かったような感じで。
富士山には霧がかかっていて、それでも五合目まで上がったら急に視界が開けて…辺り一面雲海の上。
凄い綺麗…奇跡みたいだね…とか言いあって。
そして帰り際、愛子ちゃんに言われたんだ。
「三月くんとは付き合えない」って。
何でって聞いたら、愛子ちゃんが言うんだ。
竹村さんから止められたんだと。
他の人はともかく、三月とだけは付き合わないでくれって…嫉妬でおかしくなるからって。
愛子ちゃんが言うんだ…もう竹村さんとも会わないって…でも竹村さんの最後の懇願だから三月くんとも付き合わないって。
なんだよそれって思って…だからとうとう言っちゃったんだ。
あの日、愛子ちゃんが言ってたんだぜ…もう別れたからって、やっと俺だけと真摯に向き合えるって…全然別れてなかったんじゃん、嘘ばっかだったんじゃん…って。そしたら愛子ちゃんは黙り込んで…俺たちに会話は無くなった。
そして俺たちは…別れた。
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―
この事は誰にも話さなかった…と言ったら嘘になる。俺は夏美先輩と京子ちゃんだけには話したから。
二人とも、竹村さんと愛子ちゃんの噂は知っていたと言った。俺には話せなかったと。
…聞かないスタンスを取っていたのは俺だ。
だから二人が話してくれなかった事は仕方がないことなんだけど、身勝手ながら思ったんだ。
…女って怖いな…って。
…そして俺は…二人に話したことをこの後…真底後悔した!!
…なぜなら…
あれから年末までに3つの出来事が起こったんだ。
竹村さんが離婚した。
愛子ちゃんが会社を辞めた。
竹村さんが…会社を辞めた。
何が起こったのか…真相は分からない。
単なる偶然かもしれない…俺とのことなんか関係無く、二人の関係は発覚寸前だったのかも。
ただ…俺は怖くなった…信じられなくなった。
疑心暗鬼に陥った俺は、夏美先輩とも…京子ちゃんとも距離を取るようになった。
ヨット部は辞めた。テニス部も辞めた。
会社の人間とはプライベートな付き合いを辞めた。
それでも
そして俺は…悪友の禁断の誘いに…乗った。
俺の
プロローグはそれから約一年弱、弘美ちゃんと長谷川先輩の披露宴二次会での出来事。
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京子「だからさっ!3年後の先輩の29歳の誕生日にさっ!もしあたしたちふたりともフリーだったら…結婚しちゃおう!って話!!」
https://kakuyomu.jp/works/16818093082715289936/episodes/16818093082717254714
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ごめんよ京子ちゃん…その時の俺にはもう…京子ちゃんを信じる事は…出来なかったんだ…
俺が後の嫁、沙織と知り合うのは…そこからまた約一年弱…俺の入社五年目の夏だった。
(完)
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