第7話 カップルの喧嘩なんざ犬も食わない…真理だわ

「わ…悪いね。ここは俺が払っておくから…じゃ」

彼氏「…待てっ!」


…いや…待てとか言われても…


彼氏「い…いや…待って…待ってくださいっ!」

「………はあ」


いきなり、テーブルがなかったら土下座かい!って勢いで頭を下げられてしまった。


彼氏「…俺、何がいけなかったんでしょう?」

「…」

彼氏「…俺、このまま京子と駄目になっちゃうのかな…そんなの耐えられないっすよ!」


しらねーよ、んなこと…とも言いにくいしなあ…


「…何言われても怒んない?」

彼氏「はいっ!」


…嘘だね、お前のタイプはゼッテー怒る…


「…セックス禁止」

彼氏「…は?」

「…京子ちゃんから求めてくるまでセックス禁止!」

彼氏「…ふざっけんな!なんでんなこと!」


…やっぱり…


「あ~もういい!そんじゃね!」

彼氏「待って!すんませんっしたっ!」

「…」


面倒いなあ!あんま時間無いんだよ。


「セックスするようになる前、どんな会話をしていた?それはそれで…きっと楽しかった筈だ」

彼氏「…」

「まずはそこに戻って…毎日…は無理でも出来る限り接触!」

彼氏「…ません」

「…は?」

彼氏「…思い出せません…俺たち何話してたんだろ」


…死ね!!…と言いそうになるところ必死に留めた。



京子「遅いっ!!」

「…」


まあ、そうなるわな。京子ちゃんは車の横で佇んでいた。ファミレスまで車で来たんだから当たり前だ。



京子「…」

「…」


車中に無言の男女…べつに良いけど。


京子「…どこ向かってるのよ」

「どこって…お前の家」

京子「…そうじゃないでしょ!?そこは傷ついた後輩を慰めるべく夜の海辺にドライブ一択でしょうがっ」


…うん、ほんと、会社の後輩じゃなかったら、そこらに放り出して縁を切りたいくらい面倒くさい!


「…何が傷心だよ…おおかた『売れてるのなんでちゃんと教えてくれないの?』あたりだろ?」

京子「…」

「…いや、ゼッテー彼氏はしゃべってる。お前、メジャー紙じゃないから聞き流したんだろ」

京子「…」

「ついでに言っちゃうけど、どうせ最近は会う頻度は減るわ会ってもすぐセックス求められるわ…自分らの付き合いってこんなじゃ…」


京子「そうだよ!…先輩のバカっ!!」

「…」


京子「…先輩の…バカ」

「…」


しょうがねえなあ!

俺は横須賀に向かって舵を切った。


京子「…今日さ…」

「…」

京子「心地好かったんだ…先輩と一緒に漫画読んでるの」

「…」

京子「…べつに何か話す訳じゃなく…ただ時間がゆっくり流れていくの…楽しかったんだ」

「…」

京子「あいつとの付き合いも…こうだったなあ…って思い出しちゃったんだ」

「…」

京子「…何か言えよう!!」


本当に面倒くさっ!…正直、今の気持ちを一言で言えばこれだった。

それと…今、こいつを墜とすのって…たやすいなと、本能が告げてきていたんだ。

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