第5話 後輩のご母堂がガチだと追い込まれる

京子母「…お話は伺いましたわ桂木さん」

京子「ママ…」


お母さんの顔は…厳しいまま…


京子母「お気の毒とは思いますが…やはり宿泊は非常識だと思うのですよ」

京子「ママ!」


「…言葉もありません…おっしゃる通りです。本日はこれにておいとま…」

京子「先輩っ!!」



京子母「…なんてね~、うっそ~」

「…は?」

京子「…はあっ!?」


京子母「…冗談よ。京子ちゃんが信頼している先輩ならばこちらは構わないわ。今日はパパもトラブルで帰れないとか連絡来ていたから男手は逆に助かりますわ」


「…」

京子「…ママのバカっ!」


「あ…」と、突然思い出したように、京子ちゃんそっくりの顔を持つ目の前の美しい女性がイタズラっぽく笑った。


京子母「今夜は、京子ちゃんの会社での姿を包み隠さず教えてくださいませ。それが宿泊の条件ですよ」

京子「…ホントにママの…バカっ!!」


同じ顔の親子がギャーギャー言い合っているのを傍目に、俺は「それじゃAKIRAの続きは観れないなあ」などと…鬼畜なことを考えていた。


京子母「まあまあ…京子ったらそうなんだ~」

京子「先輩…それ以上しゃべったら…わかってんでしょうねっ!」


俺は営業だ。初対面だろうが共通の話題がある相手なら会話は苦にならない。

それに京子ちゃんの顔色がくるくる変わるのは面白くて。

…いつのまにか京子ちゃんは俺の隣にピッタリついてきて、話がヤバめの方向にいきそうになると、俺を牽制するようになった…俺の太ももを思いっきりツネって。痛いっての!



突然、電話が鳴った。


京子母「…彼氏っぽいわよ?京子ちゃん」

京子「え!やだっ!部屋で取るっ。…先輩?よけいなこと言わないでよねっ!!」

バタバタと二階に上がっていく京子ちゃん。


京子母「…」

「…」

京子母「桂木さん…今日は楽しい話をありがとうございます」

「…」

京子母「あの子、会社ではホントに無愛想なんでしょうね…だってこの一年、あの子の会社の話なんか聞いたことがなかったもの」

「…京子ちゃん、不器用だから」

京子母「…そうね」


オタクが地に潜る場合、主に2つのパターンにわかれる。

あえて非オタを演じて社交的に生きるか…無愛想に世捨て人を演じるか。


妹の五月さっきなんかは前者。非オタの友達も多い。そのかわり息が詰まるのか、俺やオタ友の南ちゃんの前ではグダグダになる。


京子ちゃんは…その美貌・メンタルの強さから、他に友達を作ろうとしなかったんだろうなあ。

まあ、彼氏もいるみたいだし…それでも困らなかったのだろう。


京子母「でも安心しましたわ。あの子にも会社にあなたのような話せる先輩がいたなんてね」


…うん、まともに会話したのは今日がはじめてだってことは…言わないほうが良さそうだ。



京子母「…ところで」

「はい?」

京子母「重要な話があるの」

「…重要な話ですか」

京子母「…ええ、わたしたちの関係を大きく左右する重要な質問よ!」


…まずい!この人、99%同類…


「あのですねっ…その質問は京子ちゃんが戻ってか…」

京子母「あなた、シャアとアムロ、どっち派?」


ヤバい!目がマジだ!!…回答によっては…即、敵認定の…


とぼけるか…非オタだとは今さら語れないにしても、「ガンダム?僕分かりませ~ん」と。

…いや…重症ファーストガンダムガチ勢はその瞬間に敵認定される場合も…(出典は五月うちのバカいもうと)。


どうする?どうする!?『シャアとアムロ』って言い方から…十中八九シャア派だと思うんだけど、京子ちゃんは間違いなくアムロ派…。


「…お…お嬢さんは確かアムロ派…」

京子母「…あ゛!?」

「いえっ!何でもっ!!」


駄目だ!賭けるか賭けるしかないかっ!


「………シ」

京子「先輩!大変~~」

京子母「…京子ちゃん?」


バタバタと凄い勢いで京子ちゃんが二階から飛び降りてきて。


京子「…ごめん、先輩。この後付き合って!!」

「な…何かあったの?」


京子「彼氏が…来ちゃう!先輩と話したいって」










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