第19話 社内旅行…でレイプ?

「…と言うわけで社内旅行のバスが走り去り、一人取り残されたAくん。その後バスが事故にあい、彼は一人だけ生き残ったんですが、何故か焼死体の中に彼と同じ歯形を持つものが」

次長「うん、その都市伝説は俺も知っている。しかしな桂木、それと俺がSAのトイレから表に出た瞬間バスが走り出したのは…何の関係があるんだよ!」

…だって、次長一人だけ休憩から戻って来ないし…バスのみんなが「ここでバスが走り出したら面白いよな」って。

運転手さんもノリノリで、ただ幹事グループのまとめ役の総務課長が「お前ら俺の首を飛ばす気か!!」って必死にバスを止めようとして

…面白かった!!


本年度の社内旅行は、サービスエリアでの、営業次長の全力疾走から始まりましたとさ。


※え~と、決して三月とこの次長さんが仲が悪かったとか言うことではなく、次長さんがみんなに愛される人柄だったこと、この会社にそんなイタズラが許されるような社風があったのですね。

ちなみに、この次長さんは、後に三月と嫁さんの仲人をつとめてくださいました。



修善寺のお宿は、「…ここ、うちがどんちゃん騒ぎしちゃ不味いんじゃないの?」てな格式高~い和風宿。

横浜支店のメンバーば、先に到着してくつろいでいたのだけれど。


長谷川「か…桂木、遅かったな…」

「…ええ、大魔人じちょうの怒りを抑えるのに時間が取られまして…」

長谷川「頼む…あればお前じゃないと…」

「…あっちゃ~」


格式高いお宿のロビーの一角を占拠して、相変わらずどす黒い「近寄るな」オーラを撒き散らしているのは…


「…夏美先輩…お願いですから、手を貸していただけませんか…」

夏美「…うん、旅行中は出来るだけあのきょうこに話し掛けるようにするよ…」


そこにはいつものように、顔面偏差値だけはカンストしている孤高の鉄面姫きょうこちゃんが…


京子「…先輩、遅っそ~い!!」

お前、支店に友達とか…いないよなこれじゃ。




???「そら、イッキイッキイッキイッキ!」


社内旅行の宴会は、上の人の挨拶イッキから始まる。

基本、この頃の会社は、お酒が飲めないとか言うやつに人権は無かった。

下戸の俺が進んでこういう場の幹事にしゃしゃり出るのは…忙しく裏方やっていると流れ弾に当たりにくいからだ。

…だが…しかし…


???「あ!そら!イッキイッキイッキ…」


明日仕事じゃない上に帰る必要の無い宴会…一言で言えばカオスだった…


女将さん「か…幹事さん!炉端には足をつっ込まないように言ってくれとあれほど!!」

「…すみません…」


次長「…わしの若い頃は、とにかく上職には…こら!聞いておるか三月!!」

「じ…次長…そろそろ座敷のお酒の調達に」

次長「…なんだと?お前、わしの酒が飲めんのか~!?」

中島「次長!三月はみんなの幹事なんです!三月の代わりに僕が付き合いますっ!」

…中島~お前本当に良いやつだな…でもさ…お前俺以上にお酒飲めないじゃん…


女将さん「か…幹事さん!炉端にはゲロを吐かないように言ってくれとあれほど!!」

「…すみません…」


中島「あ~三月~、この階のトイレってこっちだっけ~」

「待て!中島!そ…そこはバルコニーだ。連れて行ってやるから大人しく…」

中島「…うるえぇぇえぇぇ」

「…」


部長「…王様だ~れだ」

??「…きゃ~」

…部長…それは…あんたの立場じゃ絶対にやってはいけないことでは…


女将さん「か…幹事さん!宴会場では寝ないように言ってくれとあれほど!!」

「…すみません…」


がっ!!いきなり後ろから腕を捕まれた。

京子「せ…先輩…もうダメですっ。どこか安全に眠れるところを…」


次長「…わしの酒が飲めんのか~」

「…」

遠くで…遠くで悪魔じちょうの叫びがこだましている。

あれに捕まったが最後、無限地獄イッキたいかいに引き摺り込まれるのは目に見えている。

次長「…三月~どこだ~」

…バカヤロー、名指しで俺を呼ぶなっ!周りがいけにえを探し始めるだろうが!!


京子「せ…先輩」

「…大丈夫だ!こんなことも…あろうかと!」


中島「す~」

京子「せ…先輩…中島さん大丈夫なんですか?」

「大丈夫!下手に起きてると『トイレ~』とか言って窓から外にダイブしちゃうから…軽くシメ落とした」

京子「…」

弘美「う~ん…す~」

京子「…」


すでに…事前に決めた各人の宿泊部屋など荷物が置いてあるだけに過ぎずバラバラ…

俺達かんじは、悪魔じちょうから最も目立たない部屋を数ヶ所、泥酔者用の退避場所として用意していた。

部屋には、次長にぶっ潰された中島と…王様ゲームで標的にされて潰され掛けていた弘美ちゃんを密かに退避させていた。


「この部屋の場所と鍵は幹事しか分からないんだ…もう寝ようか…京子ちゃん」

京子「…あたし…二度と参加しない」

…でもさ…基本、社内旅行なんて強制参加でさ…去年は『親戚の法事』とか言って断ったんだろ?京子ちゃん、これから何人親戚を殺しちゃうの?



京子「(先輩、寝た?)」

「(まだ)」

京子「(先輩ってさ…なんで発情しないの?女の子がこんなにそばで寝てるのに)」

「…」

京子「(そりゃさ、五月いもうとちゃん見ていれば、先輩が美人慣れしているのは分かるけどさ…)」

「(しっ!)」

京子「(!…長谷川さん?)」


長谷川さんは幹事の一人だからこの部屋には入れるんだけど。


長谷川「…弘美ちゃん」

「!」

京子「!!」


長谷川さんが弘美ちゃんに覆い被さった。

弘美「うん…!いやっ!ダメっ!」

長谷川「弘美ちゃん!」

弘美「や!や!は…長谷川さん…ここじゃダメっ!」


京子「(せっ先輩!どどどどうしよう)」

ん~何となくだけど…これはレイプじゃないな…この二人…いつの間にか付き合っているんだな…でも、人のエッチなんて覗く趣味無いし。


ガッ!!

京子「いった~い!先輩っ!なんで蹴っ飛ばすのよっ!!」


長谷川「!」

弘美「!」

中島「う~ん、どうしたの~」


この瞬間…本当に一瞬で…長谷川先輩は弘美ちゃんから1mの距離を取った。

京子「(もがっ!もがっ!!)」

俺は文句言いたげな京子ちゃんを抱きしめて封じて…




中島「す~す~」

弘美「…」

長谷川「…」


やがて…長谷川さんは静かに部屋を出ていった。

そして…静かに嗚咽を漏らしていた弘美ちゃんも…しばらくすると部屋を出ていったんだ。


京子「…」

「…」

京子「…先輩、あの二人って…付き合っていたのかな…」

「…どうなんだろうな」

京子「…それはそれとして、痛かったよ…先輩。その後も乱暴だったし」

「…悪かったよ」

京子「…見返りがほしいな」

「…へっ?」

京子「…あたし…今、エッチな気分なんだけど…」

「…」

京子「…責任…取ってくれる?」


この部屋のもう一人…中島はしばらくは起きそうも…無かった。



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