第2話 大人の卓球勝負はエロい
「お前…AKIRAの完全装飾版…全巻持ってるのか?」
京子「うん、新人の安いボーナスで買った」
「…そもそもなんで手に入るんだよ」
あれは手に入りにくい…少なくとも俺は諦めてた。
京子「あたしの彼氏、売れないけど一応プロの漫画家でさ。出版社のつて使って貰ってさ」
1900年代…世間の風当たりは俺たちには厳しくて…
そんな中で見つかった貴重なオタク仲間、しかも社内。
しかも…お互い見るからに…重症。
自分の仕事はさっさと終わらせていて、帰って良い筈のこいつは何故か俺の横須賀行きに付いてきた。
車内で遠慮無く交わされるオタク話は、ここ一年分の会話量を遥かに凌いでいて。
俺の現場仕事が終わるまで待っていたこいつは、戸塚の自宅まで車で送っていけと言い出していた。
「…せろ…」
京子「…は?」
「俺にも見せろ!完全装飾版」
京子「…見返りは?」
「ZガンダムのVHF、全話」
京子「くれるの!?」
「やるかバカ!貸すだけ!!」
京子「…あたし、AKIRAは絶対貸さないよ?」
「……」
京子「見たいなら、うちに来るしかないよ?」
「……」
京子「うら若き後輩社員の自宅に寄って、乙女の寝室に侵入して…そんな覚悟が先輩に…」
「いや、寄って良いなら寄るけど」
京子「……」
「……」
京子「…先輩、血液型 Bでしよ?」
「そういうお前はA型だな?」
この瞬間お互いの顔に安堵が浮かんでいたと思う。
「「(ああ…こいつは恋愛対象には成り得ない)」」
京子「AKIRAの完全装飾版か…どうすっかな~」
―
―
「なんでこんなところに連れて来た!?」
京子「いや~、迷ったらやっぱり勝負でしょ?」
突然、横須賀から江ノ島に向かってくれと言い出した京子。
着いた先は…卓球場?
「卓球で俺に勝てると?」
京子「先輩、自信あるんだ。ヤバイな」
そう言いながら、シェイクハンドのラケットをくるくると扱う彼女もやけに自信ありげで。
京子「なんか先輩にしか特典がないからあたしにも勝利の特典頂戴!」
「…なんだよ」
京子「あたしが勝ったらさっ」
「…」
京子「帰りにハングリータイガーのステーキおごって」
「…ハンバーグステーキじゃなく?」
京子「なんで奢りでハンバーグステーキなのよ」
「…」
…負けられない戦いが…勃発した。
―
―
京子「あ…先輩?あれは?」
「ん…なんだ?」
京子「うりゃっ!」
京子「いゃん、先輩、そこはっ!」
「ば、バカ!そんなに足開いたら見え…」
京子「うりゃっ!」
「……」
11ポイント制二セット先取の三セットマッチ、一見本格的に見える…実はボロックソの戦いが、良い歳した大人の男女の間で…延々と続いていたんだ。
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