勇者パーティを追放されたオレは、始まりの村のお花畑で微笑むモブ村娘を絶対に振り返らせたい.04

「アルベルトさん、大丈夫かい」

「なにがよ」

「いや……お前さんのレベルだとちと厳しい相手だぞ」


 オレは、はん、と息を吐いてやった。


「だからやり甲斐があるってもンだろが。この黄金の鎧に賭けてな」

「黄金って、お前さんのは真鍮じゃ……もがもが」

「細けーこと気にすんなって。じゃ、行くわ」


 オレは愛用の剣を鞘に収め、金の竜が描かれた盾を背負った。

 描かれてる絵は、鍛冶屋のバイトの絵描き志望の女の子に描かせたもんだ。

 本当はただの鉄の剣、鉄の盾。

 それでも、オレの心の奥底に、勇気が灯るのを感じる。


「しゃあっ、行ってくるぜっ!」


 オレはギルドの扉を軽快に開け放って、そう高らかに宣言した。


 ……


「つまり……仲間への復讐は希望していない、と?」

「おう!」

「いいの? すーっとするよー? きもちいよ?」

「おう!」

「……あのね。こう見えてわたしだって復讐神やらせてもらってるからね」

「おう!」

「貴方の心の中くらい、見なくてもわかるんだけど」

「おう!」

「ホントは悔しいんでしょ。見返してやりたいでしょ」

「おう!」

「ねー? いい子だから、『お願いします』とおっしゃいな?」

「おう!」

「……」

「おう!」

「……だめだわ、コイツ」

「おう!」

「じゃあね、モブ子ちゃんと元気でね?」

「おう!」


 ……


 はっはっは。


 やったぜ。

 あいつ、復讐「神」とか言ってたっけ。


 オレ──

 神様相手にテメェを通したぜ。


 はっはっは。


 ざまーみろー!


 はっはっは……


 はあっ、はあっ……


 ……てててて。

 くそ、アバラ折れてるな。

 左手が上がらねえ。

 肩もやっちゃったかな。


 でも、やったぜ。


 これで村の水源を牛耳るリザードマンの親玉と手下ども、まとめてやっつけてやったぜ。


「はっはっは! ざまーみろー!」


 オレは大声でひとり、勝利の雄叫びを上げた。


 ……


 村の水路に、一週間ぶりに水が流れた。

 この水路は村をぐるりと周っている。

 だからもちろん……

 村の入口にも清い流れを作っている。

 モブ子(仮称)は、五分に一回、ここに立ち寄って桶に水を汲む。

 七日前から、水を汲むフリをしていた、モブ子。

 見ろよ、モブがバグってるぜ。

 そんな悪口、見返してやりたくて。


「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」


 はっはっは! ざまーみろー。


 水のたっぷり入ったバケツを持って微笑むモブ子(仮称)は、今日はなんだかとても誇らしげだった。

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